このページでは、坐骨神経痛を引き起こす腰痛疾患について、説明していきます。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、椎間板が神経を圧迫したもので、坐骨神経に沿って激しい痛みが起こるのが特徴です。
痛みや痺れが発生する場所は、臀部から太ももにかけて、または臀部、太もも、下腿部にかけて、また足先まで痛みや痺れが現れます。
仰向けに寝て足を30度以上上げると、神経の走行に沿って痛みが増大する場合、この疾患が一番に疑われます。
分離すべり症(腰椎)
妊娠や柔道などの激しいスポーツ、重い荷物を持つなどの仕事、腹筋や腰背筋群や腹力・脚力の低下などが関与して、引き起こされることが多いです。
分離すべり症の場合、腰椎の前弯を増強することによって痛みが増大するのですが、重症化すると腰部から臀部の痛みだけでは済まなくなり、坐骨神経の走行に沿って痛みが出ます。
腰部の骨が前に滑り、階段状に前に落ち込むため、視診でもよく分かります。さらに、触診すると腰部の筋肉および臀筋群が非常に緊張して、押圧すると神経痛の様な痛みが伴うことが多いです。
脊柱間狭窄症
脊柱間狭窄症の特徴は、間欠性跛行です。
間欠性跛行の症状は、歩いていると臀部から大腿、下肢への痛みが増強し、途中でしゃがんで休むとまた歩けるという状態です。
重症化するほど、続けて歩く距離が短くなり、2,3キロ歩けていたのが、1キロ以内、500メートル、100メートル、数十メートルとなってきます。
徐々に進行する病気であり、近年この疾患が大変に多くなっています。
高齢者が増えたことが要因だと考えられますが、特に運動不足と姿勢の悪化が原因しています。
さらに、日常生活の動作や姿勢、食生活、呼吸(呼吸力)、筋肉や筋力の状態、全身の血行や代謝の状態、精神や肉体疲労が及ぼす血行障害や筋力低下などすべてが関与しています。
変形性脊椎症
変形性脊椎症は、加齢とともに椎間板が薄く、硬くなり椎骨間の弾力を失うため、腰の一つ一つの椎骨に負担が増強し、腰椎は退行性変性を引き起こします。
変形性脊椎症の中で、年齢以上に変形しているケースでは、坐骨神経痛を引き起こすことがあります。
腰椎疾患に含まれないことが多く、軽視されがちなので注意が必要です。
腰椎圧迫骨折
腰椎圧迫骨折による痛みは、激しい神経痛を伴いますが、多くは腰の周囲に限局したものです。ただし重症になると、神経痛の範囲は臀部などに増大し、坐骨神経痛を引き起こします。
心因性
原因不明の慢性腰痛や坐骨神経痛のなかには、心因性のものが含まれ、ストレスや心の問題が痛みを引き起こす原因として大きく影響しています。
~心理的要因も腰痛や坐骨神経痛を慢性化させる要因です~
人は夢や目標や希望などのプラスの感情をもっている時は、やる気があり、仕事が忙しくても、また難しい仕事も積極的に前向きにこなせるものです。
さらに達成感や幸福や満足感、人との一体感を感じられるものです。いくら忙しくても、疲労や痛みを感じにくいものです。
逆に、身体が非常に疲れている、寝ても疲れが取れない、身体が重い・だるい、寝つきが悪い、運動不足、体調がいつも不調で健康感を感じられないなどの身体的不調の時は、痛みを感じやすい状態と言えます。
仕事による人間関係で生じるストレスや多忙、精神疲労や肉体過労、また私生活においては、家族や友人・社会からの孤独感や孤立感が、腰痛や神経痛というかたちで表れます。
夢や目標や希望を持てない、絶望感や無力感、不安や恐怖、抑鬱感、自信をもてないなど、精神的不調の時も、痛みをより感じやすくなっているのです。不安や恐怖、絶望感などの重篤な精神抑圧が継続することにより、肉体的には腰の痛みがすでに解消しているにもかかわらず、脳が痛みとして認識してしまいます。
日常生活のなかで、食生活の不摂生、睡眠不足、ストレスや精神過労、不自然な姿勢や動作、肉体疲労、運動不足などを解消することが大切です。
病名を付けられても怖れないで
筋肉が硬化して神経を圧迫すると、骨の動きや関節の動きをスムーズに支えられなくなります。
さらに病態が進むと、骨の変形や椎間板の萎縮に繋がります。
それらのいずれもが神経痛の原因となるのです。
坐骨神経痛の病名は検査によって病院でつけられた名前です。主に椎間板ヘルニア、脊柱間狭窄症、分離滑り症、圧迫骨折などの骨の病気です。骨の変性や転移、神経の圧迫などの状況により、様々な病名がつけられているだけなのです。
だけど病名をつけられたからと言って、必要以上に怖れる必要はありません。
なぜなら、骨を支え、栄養しているのは、主に筋肉の働きです。その筋肉を良くすればほとんどの症状は改善します。
私の経験ですが、全体の80%ぐらいが、腰の骨の異常が病気の原因であっても、骨を支える筋肉の改善や、骨盤や姿勢を矯正して神経の炎症や圧迫を取りのぞけば、多くの坐骨神経痛は改善していきます。※ただし、重症の場合は、手術という選択肢が適切な場合もあります