中医学用語をくわしく知る

中医学用語のよりくわしい解説

気・血・水とは

気血水
鍼をすることにより身体の気血水の流れがよくなり、身体の隅々まで気が巡り、血液と水分で細胞が循環され、さらに筋肉の凝りや身体の歪みが改善されていきます。

正と邪・実証と虚証とは

中医学では、病気の状態を「」で見分け、「実証虚証」を判断していきます。
一見難しそうに感じますが、一つずつ見ていくとわかりやすくなりますので、説明をしていきましょう。

①「身体に元来なくてはならないもの」で判断する

」は、「身体に元来なくてはならないもの」を指します。

例えば、手足や骨、筋肉、内臓、血液、胃腸、体温を維持する機能や、食物を消化分解する能力、細菌に対する抵抗力も正となります。

正は、「身体に本来なければならないもの」である以上、不足すれば健康な状態ではなくなります。
中医学では、この正が不足している状態を「虚証」と言います。

②「身体に本来あってはならないもの」を判断する

では「邪」はどうでしょうか。

」は「身体に本来あってはならないもの」を指します。

例えば、体内に侵入した病原菌やウイルス、細菌などが邪となります。

寒い環境に長くいる時、身体がその寒さ冷たさに十分対応できなければ体調を崩してしまいます。
これは、寒という邪が身体の中に侵入してきたために引き起こると考えます。

湿気が多いところに長くいると、湿という邪が体内に侵入し体調が悪くなります。

邪は「身体に存在してはならないもの」である以上、邪が人体に存在していれば、健康な状態ではなくなります。
中医学では、邪が身体に入っている状態を「実証」といいます。

しかし、臨床で出会う多くの病症は完全な虚証や実証であるというような単純な症例は少なく、実証と虚証が互いにいずれかの割合で混ざり合っているのが大半です。

陰の性質

陰性の方の対処法は、身体全体を冷やさない事、特に下半身を温めることです。

冷えの体質(陰性)の方は身体の中にもともと寒の性質を多く持っています。だから少しの冷えでも痛みが起こるのです。

外気の寒い状態・肌寒いのに薄着の状態など、他の人にとってはちょっとした寒さでも影響を受けやすい状態です。

対処としては、夏であっても下半身を冷やさないように温かいズボンをはくなど、「下半身を温める」ことが大切です。
また身体を温める食事をとるのも効果的です。

陰性の方がやってはいけないこと

  • 寒い所での長い立ち話
  • 服を着替えないで寒いのを我慢する
  • 足が冷たいのに台所などにずっと立っている
  • 足が冷たいのにスカートをはく
  • 風にあたること
  • 湿気があり寒い所(夏のクーラーの下)

<何故風にあたるといけないか?>

風は百病の長と言われ、湿気や寒邪を身体に引き込む性質があります。具体的にいうと、風が皮膚にあたることで、皮膚の腠理 (ソウリ)つまり皮膚のキメをこじ開け、皮膚のガードを崩し、自然界の六気を多く取り入れすぎてしまいます。六気自体は、悪いものではないのですが、多くなりすぎると、寒すぎる、湿気過ぎるなど身体に害を及ぼします。
坐骨神経痛は冷やした方がいい?温めた方がいい?

陽の性質

陽性の方の対処法は、動き過ぎないことと、汗をほったらかしにせず、すぐにぬぐうことです。
薄着でいつも汗をかき気味で顔が赤く、馬力のある方は、陽性すなわち、熱の性質がもともと多いので、よく動きかつ汗をかきやすいのが特徴です。
そのような方は、動き過ぎに注意をしてください。動き過ぎることでも、深層の筋肉まで負担がかかり、筋肉が硬化し神経圧迫を引き起こします。
動いて汗をかくことで汗が蒸発し熱を奪うため、陽性の方でも部分的に冷えを引き起こします。これは汗を拭くことで対処できます。

特に陽性の人は、暑がりで日ごろから身体が温かく、汗をかきやすいです。このような方は、汗をかいたらすぐに拭き、身体や患部を冷やさないようにするだけで良いです。温めても改善はあまり期待できないので、負担のかかる動作や姿勢を取らないことの方が重要です。

陽性の方がやってはいけないこと

  • 汗をかくような運動
  • 重いものを運ぶ
  • 過労や重労働
  • 風にあたること
  • 身体を温めすぎない

にんにくや唐辛子を汗をかくほどとりすぎるのは、身体を冷やし、特に患部である腰や臀部を冷す結果になります。

「湿」を産生

これらの明らかなとりすぎは、体内に湿を産生させます

  • 醤油と砂糖と味付けの濃いおかず
  • アルコールのとりすぎ
  • 冷たいもののとりすぎ「生野菜・さしみ・冷えたビール」
  • 食べたり食べなかったり
  • 肉類、油類、甘いモノが多いなどの偏食

中医学弁証

中医学弁証論治とは、生活習慣や感情、体質などが、どのような原因によって現在の病気に発展したのかを細かく分析し、明確な病態に表し、総合的な分析結果に対して治療を施すことを言います。
中医学弁証
四診には、舌診や脈診も含まれています。

当院では、初めて来院された患者様には10-30分かけ、しっかりと問診をして、舌脈診を行い、身体どのように障害されているかを寒熱、虚実、陰陽、臓腑弁償、気血津液弁償と様々な中医学視点から分析し、身体の総合的な病態を把握し、に表します。これを中医学弁証と言います。
※この中医学弁証は、25年前に始めた当初は長くて3・4日かかっていましたが、様々な患者様の臨床を得て、次第に2-3時間と短時間で出来るようになり、今では平均15分で行うことができるようになりました。
中医学弁証の段階で、証により患者様の総合的な病態を把握できますので、治療後がどうなるかをしっかりと予測し、鍼治療に入っています。また立てた証の確認のために脈を見て毎回確認も行っています。

身体の総合的な分析である証を立てられるようになるには、多くの経験と長い年月を必要とするのはそのためです。

どのようにしたら改善できるのかという点で、一番大切なのは、技術ではなく見立てです。正しい診断なのです。
日常生活のあらゆるものが身体にどのように影響しているか、分析できると言うことが大切です。正しい診断のもとに的確な治療ができるのです。

すなわち証をすぐに導き出せるようになるのです。
証が幾つも重なって複雑な病態も五臓の生理など、中医学基礎理論を自在に応用して証を立てる事が出来るのです。

中医学による診断と治療は、四診で得られた情報を総合して、どんな病態であるかを詳しく導き出します。病態とは、一つ一つの症状や病名ではなく、疾病の背景にある原因や病邪の性質と盛衰、人体の正気の強弱、疾病の軽重などを総合して表したものです。これを証と言います。すなわち証とは、疾病のもつ総合的な病態を表しています。

証候

この明確な病態というのが、証候というものですが、個々の病態を中医学理論によって、一定の観察手順で一人一人弁別していくことを弁証といいます。

八綱弁証・気血津弁証

~必ず行う基本弁証~

弁証には、八綱弁証臓腑弁証気血津液弁証などがあります。

これらの弁証の中には、身体のあらゆる客観的な情報が凝縮されています。

病勢の強弱も、人体の持つ自然回復力の強弱も、どこの何をどのように治療したら良いのかも導き出されています。

~病気ではなく,病人を診る~

痛いところに鍼を打つというのではなく、疾病を詳しく分析して導き出された病態に対して鍼をうつのです。
病気に対して鍼を打つのではなく、病人に対して鍼を打つのです。

臓腑弁証

臓腑弁証を行います
肺・心・脾(ひ)・肝・腎(じん)の五つの内臓のことを指す「五臓」には、それぞれの役割があり、いくつもの生理作用(働き)があります。
この五臓の、どの臓腑の生理作用のどんな働きが「不足したり過剰になっている」のか診ていくことを臓腑弁証と言います。

どの臓腑の何と何の生理作用(すなわち働き)が、失調(過不足)しているかどうかを診ることにより、身体の具合が悪くなっている理由がわかり、かつ何を改善したら良いのかわかります。
五臓の働きは、互いに助け合ったり、牽制し合ったり、良いバランスを取っています。五臓のバランスが崩れた時、疾病が起こりますので、失調した生理作用を改善させることによって健康に導かれます。

病因弁証

中医学における診断・治療法を示す方法論で、その診察方法は四診といわれる、「」「」「」「」で構成されます。
この四診から中医学的疾病の情報を収集・統合・分析し、診断と証の分類(弁証)をおこない、処方を決定する診断法です。

四診による弁証、八綱弁証・病因弁証・気血津弁証・臓腑弁証などの弁証法に加え、病位・病・病性・邪気・正気などを加味しておこなわれます。
中でも、その基礎である八綱(陰・陽・表・裏・寒・熱・虚・実)により人体の正気の強弱、病変部位の深浅、病邪の盛衰などを総合的に分析する手法のことをいいます。

筆者
はらだ鍼灸整骨院 院長 原田浩一
"はり・灸と健康は仲がいい"

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