シンスプリントとは
シンスプリントは、ランニングやジャンプなどの運動を繰り返すことで、すね(脛骨)の内側下方1/3のエリアに痛みが生じる状態を指します。
一般的には「使いすぎ(オーバーユース)」が原因とされますが、
当院では「足首の傾きを支える力が低下していること」が根本的な要因であると考えています。
なぜ痛みが出るのか?(構造と機能の視点)
1. 【最重要】足首の「傾き」と後脛骨筋
解剖学的に、足首は構造上、内側に倒れやすい(回内しやすい)特徴を持っています。
この「内側への倒れ込み(傾き)」を食い止め、足首を安定させているのが、すねの深層にある「後脛骨筋(こうけいこつきん)」です。
しかし、過度な運動によりこの筋肉が疲労し、粘土のように硬く固まってしまうと、足首の傾きを制御できなくなります。その結果、着地のたびにすねの骨膜へ強烈な牽引力がかかり続け、痛みが発生します。
2. 【付随要因】足の指を動かす筋肉の影響
メインの支えである「後脛骨筋」が機能しなくなると、その負担を補おうとして、足の指を動かす「長趾屈筋(ちょうしくっきん)」や「長母趾屈筋」も過剰に働くようになります。
これらはあくまで補助的な役割ですが、ここも同時に硬くなると「指が曲がったまま伸びない」「地面をうまく掴めない」といった状態になり、さらに足首の安定性を損なう要因となります。
シンスプリントの東洋医学的な見解(中医学弁証)
東洋医学では、局所の痛みだけでなく、全身のバランスの崩れに着目します。
シンスプリントのような慢性的な痛みは、気血の流れが滞る「気滞血瘀(きたいけつお)」の状態や、筋肉や骨を養う「肝」「腎」の働きが低下していることと関連があると考え、施術方針を決定します。
当院のシンスプリントの施術方針:後脛骨筋への徹底アプローチ
当院の治療のベースは、
「いかに後脛骨筋を緩め、足首の傾きを安定させる力を取り戻すか」にあります。
1. ベースとなる「後脛骨筋」への深層アプローチ
最も重要な後脛骨筋は、ふくらはぎの非常に深い場所に位置しており、指圧や短い鍼では刺激が届きにくいのが特徴です。
当院では、必要に応じて長い鍼(はり)を使用し、深部で動かなくなっている後脛骨筋の硬結(コリ)へ直接アプローチします。
ここを緩めることで、足首の傾きを支える機能の回復を目指します。
2. 足指の筋肉への同時アプローチ
後脛骨筋の治療と同時に、負担がかかっていた「長趾屈筋」などの足指の筋肉も緩めていきます。
主役である後脛骨筋と、脇役である足指の筋肉。
この両方を同時にケアすることで、足裏全体で地面を捉える感覚が戻り、再発しにくい安定したフォームへと繋がります。
施術回数の目安(一例)
症状の重さや経過期間によって、必要な施術回数は異なります。あくまで目安としてご参照ください。
初期段階(違和感や軽い痛みが出始めた頃)
目安:3〜4回程度
早期に対処することで、比較的スムーズな回復が期待できます。
中期段階(日常生活はできるが痛みが伴う状態)
目安:5〜10回程度
運動時だけでなく、歩行時や階段の昇り降りなど、日常生活でも痛みや違和感を感じるレベルです。
筋肉の硬化が進んでいるため、複数回の施術で段階的に深部の緊張を緩めていく必要があります。
慢性・超重症段階の例(日常生活でも支障をきたすぐらいの痛みが伴う状態)
目安:20回程度かかる場合もあります
(例)長期間痛みを我慢して運動を続け、痛み止め(貼り薬や飲み薬)で抑え込みながら無理をしてこられたケースなど。
筋肉が深部まで「粘土状」にガチガチに固まり、本来の機能を失っています。じっくりと時間をかけて筋肉の状態を作り直し、自然治癒力が働く環境を整えていくために一定の期間を要します。
患者様へのメッセージ
シンスプリントの改善において最も大切なのは、足首の傾きをコントロールする「後脛骨筋」をしっかりと緩めてあげることです。ここが緩み、血流が巡らなければ、根本的な解決には至りません。
補足資料:足首を安定するように支える各筋肉の働きと解説
1. 【重要】内側を支える筋肉:後脛骨筋(こうけいこつきん)
シンスプリントの解説でも登場した、足首の安定にとって最も重要な筋肉の一つです。
場所: すねの骨(脛骨)と腓骨の間、ふくらはぎの深層に位置します。腱は内くるぶしの後ろを通り、足裏の多くの骨(舟状骨など)に付着します。
主な働き(作用):
足首の底屈(つま先を下げる)と内返し(足裏を内側に向ける)。
安定化の役割:
アーチの維持: 足の土踏まず(内側縦アーチ)を頂点から吊り上げるように支えます。
過回内(オーバープロネーション)の防止: 着地時に足首が内側に倒れすぎるのを防ぎます。この筋肉が弱ったり硬くなったりすると、足首が内側に崩れ、シンスプリントなどの原因になります。
2. 外側を支える筋肉:腓骨筋群(ひこつきんぐん)
すねの外側にある筋肉で、「長腓骨筋」と「短腓骨筋」の総称です。内側の後脛骨筋と対になって働きます。
場所: すねの外側(腓骨に沿って)に位置します。腱は外くるぶしの後ろを通り、足の外側や足裏に付着します。
主な働き(作用):
足首の底屈(つま先を下げる)と外返し(足裏を外側に向ける)。
安定化の役割:
内反捻挫の防止: 足首が外側にカクンと折れる(内反する)動きに抵抗し、最も一般的な「内反捻挫」を防ぐ防波堤の役割を果たします。
後脛骨筋とバランスを取り、足が内にも外にも傾きすぎないように調整します。
3. 前側を支える筋肉:前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
すねの骨の前外側にある筋肉で、すねを触った時に一番盛り上がっている部分です。
場所: すねの骨の前外側に位置し、腱は足の甲の内側に付着します。
主な働き(作用):
足首の背屈(つま先を持ち上げる)と内返し。
安定化の役割:
つまずき防止: 歩行時につま先を引き上げ、地面に引っかからないようにします。
着地の衝撃吸収: かかと着地した直後に、つま先がパタンと地面に落ちないように、ゆっくりとコントロールしながら下ろす(遠心性収縮)役割を担います。
4. 後ろ側を支える筋肉:下腿三頭筋(かたいさんとうきん)
いわゆる「ふくらはぎ」の筋肉で、表層の「腓腹筋(ひふくきん)」と深層の「ヒラメ筋」からなり、アキレス腱となってかかとに付着します。
場所: ふくらはぎ全体。
主な働き(作用):
足首の底屈(つま先立ちする動き、地面を蹴る動き)。
安定化の役割:
強力な土台: 立っている時に体が前に倒れないように後ろから引っ張り、姿勢を安定させます。
歩行や走行の強力な推進力を生み出します。
まとめ
足首の安定は、特定の筋肉だけでなく、これらの筋肉がチームとしてバランスよく働くことで維持されています。
特に、「内側の後脛骨筋」と「外側の腓骨筋群」のバランスが崩れると、足首は容易に傾いてしまい、様々な足のトラブル(シンスプリント、足底筋膜炎、捻挫癖など)に繋がります。





