患者様の病態分析

[顎関節症]九州より来院された、7,8年来の顎関節症の患者様

初診

初診  2018年 3月 30日
35歳 女性 

主訴

顎関節症

診断名

  • 顎関節症

随伴症状

  • 食い縛り
  • 首・肩の凝り
  • 腰痛

現病歴

kyousei_00537,8年前から口を開けると顎の関節がガクガクと音がなります。それから、左の奥歯が痛むようになりました。口を開けると、耳の周辺も痛い気がしました。歯が痛かったので歯科医に行きました。歯科医では歯の病気ではなく、顎関節症だと言われました。そして矯正歯科に行くことを勧められました。

その後、矯正歯科を訪ねました。矯正歯科を受診したら、顎関節症が酷いと言われ、このままだと何年か後には、口が開かなくなると診断されました。そして、5,6年通わなければ治らないと言われました。お金も時間もかかると言われ、諦めました。

その後、県立病院の口腔外科を受診しました。レントゲンを撮っていただきましたが、それほど悪くないと言われました。レントゲン結果は異常なしでした。顎関節症だけど、日常生活には支障が出るものでは無いと言われ、特に処置はありませんでした。

どうしようもなく、最後に別の歯科医を訪ねてみました。口を開けた時に、左の顎関節の反応が遅くなっていると言われました。そして、再発を防ぐ事はできるが、これ以上悪くならないように、ナイトガード(マウスピース)を作るしか方法は無く、完治する事は難しいと言われました。毎日装着して眠るように言われました。1年くらいでナイトガードを噛みきってしまいました。食い縛りのクセがあるのだと思います。ナイトガードを1週間つけ忘れた時に、口を開ける度に顎が痛くて、噛むのが辛くなりました。

今は少し落ち着きましたが、大きく口を開けると、左顎が痛く、かたいものは食べても痛みます。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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下記の筋肉に強い筋緊張・萎縮を認める

  • 咀嚼筋(咬筋、側頭筋、外側内側翼突筋)
  • 肩背筋群(僧帽筋、菱形筋、上肢帯筋)
  • 頸部筋群(斜角筋群、胸鎖乳突筋、板状筋、後頭下筋、脊柱起立筋)
  • 腰部筋群(脊柱起立筋、腰方形筋、腹斜筋、腹横筋)
  • 臀筋群(大臀筋、中殿筋、梨状筋)

精神状態

  • 心配性、緊張症、真面目

中医学による病態の把握
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    ~舌診~

  • 舌体 老舌、少し締まっている 裂紋あり
  • 舌色、紅舌
  • 舌苔、薄白苔、水っぽい
  • 舌下静脈の怒張あり(体内の血流が慢性的に低下していることを示す。)
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分、 60 滑脈
  • 舌脈診から分かること

    体内の血流が悪く、水分代謝が低下している。気を遣いすぎて、舌につく歯形より気虚がみられるが、脈は実であり、気滞の方が強い。気滞や気虚による血瘀、水分代謝障害がみられる。

    ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
  • 気虚証
    気を遣いすぎによる気虚証がみられる。また、気滞が長く続いたための気虚証とも言える。
  • 水湿証
    薄白苔だが、水分がやや多い。水分の代謝が不足している。
  • 瘀血証
    身体内の血液の流れが悪化し、慢性化していると判断する。

方解

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心配性、緊張症、気を遣いすぎの性格で、首や肩がガチガチに凝っている。腰部筋群も同様である。下半身の力が弱く、上半身に力がこもっている。その結果、全身の血液の流れが低下し、水分代謝が不足している。緊張症のため、夜寝る時も全身が緊張したまま眠っている。そのために食い縛りが起こる。それをくり返しているために、咀嚼筋が慢性的に緊張・萎縮をしている。顎関節の動きが悪く、左が遅れている。対処的な療法ばかりで、効果的な治療が何一つなされていない。全身の疲労をとれば、精神的なリラックス、力を抜く練習すれば、改善されたことである。

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マウスピースは噛みしめをやわらげるためのものであって、消極的で、待ちの治療である。精神疲労や肉体疲労を伴う、強い筋緊張を改善させることはできない。

鍼灸治療では、精神疲労や肉体疲労を取り除く事を一番大切にしている。

精神疲労や肉体疲労を取り除くことによって、初めて咀嚼筋は緩む条件を備える。更に鍼灸治療は直接咀嚼筋を緩めることができるのである。顎関節の治療には、鍼灸治療が有効であり、顎関節症でお困りの方にお勧めする次第である。

今回の病態を見て感じたことは、効果的な方法が何一つ行われなかったために、8年も同じ病態をくり返してしまっただけで、決して重症な顎関節症ではない。適切な治療を行えば、10回程度、またほんの数ヵ月で改善する程度の病態である。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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コンディションを改善して、免疫力を高めるために、全身の血流を良くする、水分代謝が促進する、気の流れを促進しストレスを解消する経穴をまず配穴する
全身の血流を良くするツボ
合谷・太衝・内関→全身の気血の流れを改善し、精神的ストレスを緩和させる
足三里・三陰交→全身の気血及び水分代謝を促進する

現代医学的な病態把握で示した筋肉の緊張・萎縮を一鍼一鍼、心を込めて丁寧に通して、改善させる。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
食べ物を食べる時に大きく口を開けると、左の奥歯の辺りと顎の痛みがあります。顎を手で触ると痛いです。首と腰の痛みが強いですが、腰はそれほど痛くはありません。
体調の変化はありますか?
金~日曜日にかけて、腰がすごく痛かったです。金曜日の治療が終わった後、食事をした後に顎がすごく痛みだし、赤くなって少し腫れ、手で触ると痛かったです。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
顎、腰、首が痛いです。

第2回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
顎のところを触ると、少し痛かったが、よくなりました。普通に噛めるようになりました。口を開けても、あまり痛みはありませんでした。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
顎と首の痛み、腰

第3回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
顎の痛みが全く消えました。しかし、帰郷して数日後また少し痛み出しました。1週間ほど休みをとって治療に伺いたいのですが、いつ頃がいいですか?
~院長の一言~
連休までに3,4日休みをとって治療し、少しおいて、5月の連休を利用して治療しましょうか。続けて1週間より効果が高いと思います。自然回復の期間が必要だからです。治療回数は、完治には全部で10回くらい必要だとみています。

公開日:2018年4月10日 ©