患者様の病態分析

[頸椎症の疑い]首の向きを変えると、左上腕から肘及び前腕の筋群に激しい痛みが起こる

初診

初診  2018年 1月22日
55歳  男性

主訴

首の向きを変えると、左上腕から肘及び前腕の筋群に激しい痛みが起こる

診断名

  • 胸郭出口症候群(頸椎症の疑いあり)

随伴症状

  • 首、肩、背中の凝り

現病歴

neck
本年1月11日、新年会の後、首、肩、左腕に少し違和感がありました。翌日より、本格的な違和感が起こり、首を動かしたり、首の向きを変えたりするだけで、首から左上腕、肘、前腕筋群に鋭い痛みが走るようになりました。 

 車の運転にとても支障が出ています。首を動かすと、腕まで痛みが走るので、頸椎カラーで固定しています。固定すると、少し楽です。日常生活で首の向きを変えることで、激しい痛みが起こり、仰向けに寝ると、枕を高くしないと痛みで眠ることが出来ません。横向きになって頭を前に倒して、丸くなって寝ると、痛みは起こりません。

 放っておくと治るかなと思い、1週間程我慢しましたが、痛みがだんだん酷くなり、これはいけないと思い、1月22日(月)、当院に来院いたしました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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~徒手検査~

  • 左回旋痛→運動障害あり(30度)、痛み増強
  • 左側屈痛→運動障害あり(30度)、痛み増強
  • 右回旋痛→痛みがあるが軽度
  • 右側屈痛→運動障害軽度あり、痛み増強 
  • 後屈痛→後屈すると、一番激しく痛みが増強 
  • 前屈痛→痛みが増強 
  • スパーリングテスト(陽性):左へ側屈軽度行なっただけで、激しい痛みが左上腕から前腕まで走る
  • ライトテスト(陽性):左脈が消失する  
  • 仰臥位で寝ると、頭を高くしないと激しい痛みが起こる 
  • 側臥位で首を前に倒して丸めて寝ると、痛みは起こらない。
  • 腹臥位で寝ると、すぐに痛みが起こり、5分以上は維持出来ない。
  • 下記の筋群に著しい筋緊張が認められます。
    • 左頸部筋群
    • 肩の上の僧帽筋の盛り上がり
    • 左頸部より肩甲骨の外上角
    • 左菱形筋群
  • 指先のしびれはなく、握力の低下もありませんが、首の向きを変えることで痛みが起こり、その痛みが急激で、とても激しいので、日常生活がかなり制限されている。

既往歴として、以下の疾病がある。

 前年度、平成29年4月に右肩に五十肩を発症した。9月より、五十肩に胸郭出口症候群を発症し、激しい痛みとしびれがあったが、12月の末には痛みもしびれも、完治していた。快復力は良い方だが、昨年に続き、まもなく今度は左腕に痛みが発症している。首、肩に著しい筋緊張も認められる。

中医学による病態の把握
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    ~舌診~

  • 舌体 動きは正常
  • 舌色、紅舌 やや暗 熱証であり、血流の低下を想定できる。
  • 舌苔、薄白苔、やや膩(水分の代謝がやや悪く、少し湿気がある)
  • 舌下静脈の怒張、軽度あり(身体内のいずれかで血流の低下や悪化があることが分かる)
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分、 脈
  • ~気血津液弁証~

  • 痰湿証
    身体内は水分代謝がやや悪化し、少し湿気気味である。
  • 瘀血証
    身体内の一部の血液の流れがやや悪化し、慢性化していると判断する。

方解

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昨年も五十肩と胸郭出口症候群を引き起こした。回復力がはやく6ヶ月程の短期間でいずれも改善され、痛みを感じなくなった。

今年に入り、別の箇所に痛みを感じ来院された。前回は右腕の痛みとしびれであったが、今回は左腕、左肘の疼痛である。

原因は、頸部及び胸郭の筋群の緊張による神経圧迫と思われる。

筋肉による神経圧迫により、腕や手に痛みやしびれが走る胸郭出口症候群なら改善が早く見込めるのだが、徒手検査で、首の運動痛やスパーリングテストが陽性になり、痛みが激しく、ちょっとした首の角度で、痛みが増強することから頸椎症の疑いもある。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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頸椎症の疑いがある。

頸椎症からくる神経痛は、改善までの期間が長くかかり、かつ再発しやすい、治療は定期的に行い、頸部や肩背部、胸郭の筋群の緊張を取り除き、神経圧迫による神経の炎症による痛みや痺れを引き起こさないように日常からコンディションを整える必要がある。

治療としては、頸部及び胸郭、肩背部、腰部から頸椎までの脊柱全体を一つのものととらえて、全身に鍼灸治療で凝り固まった筋肉をほぐし、血流の改善を促し、筋肉の緊張による神経圧迫を取りのぞいていく。

神経を維持するための栄養も血液である。鍼灸治療で筋肉の深部まで血流が良くなることが、神経の興奮や炎症を鎮めることに繋がる。

また頸椎症の確認のため、レントゲンを撮る必要があり、提携先の整形外科に紹介状を書いた。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第4回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
背中の凝りや痛みは改善されてきたが、頸椎の角度や動きで、激しい痛みが走る。頸椎のコルセットをしていると、少し楽である。

第9回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
70%~80%、痛みが治りました。
体調の変化はありますか?
首や肩の凝りが、よ程改善されました。

第10回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
大分良くなりました。痛くない時もあります。

第11回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
ほとんど痛みはなくなりました。ありがとうございました。あんなに痛かったのに、あの痛みは噓のようです。
~院長の一言~
ゴールは目前ですね。今日は再発しないための治療を行います。

第12回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みはもう全然ありません。
体調の変化はありますか?
ありません。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
肩こりを治してください。
~院長の一言~
これで今回の治療を終了いたします。筋肉の深部までほどよく緩んだので、神経の圧迫が取り除かれました。痛みの症状はもう出ないと思います。3週間後に、一度診せてください。これからはメンテに切り替えましょう。

私見

bensyou
昨年より体調を崩し気味であり、新陳代謝や血流の低下、また筋肉の弾力や柔軟性が低下し、身体の疲労の回復力が悪くなっている。
これは、年齢的なものもあり、50の後半を過ぎると、ゆるやかに筋肉の求心性萎縮が高まる。これは一つの老化現象である。

老化現象は求心性萎縮のエネルギーをもっている。
放置しておくと、求心性萎縮のエネルギーは段々と強まってゆく。

shizen散歩をするなど身体を適度に動かしたり、軽いリズム運動、ストレッチや呼吸法を行うと求心性萎縮のエネルギーを弱体化させることができる。
音楽も良し、スポーツも良し、没頭できる楽しい趣味を作ることもその一つである。
何事も適度に行い、度を過ぎないことが大切である。
毎日、5キロ、10キロと歩く人もいるが、筋力は強化されるが、疲労が蓄積されると筋肉は硬化し、逆に身体にとって不健康となる。
歩いた後は必ずふくらはぎや太股、腰や臀筋群の緊張を叩いたり、マッサージしたり、ストレッチを行なって必ず筋肉の疲労を取っておくことが大切である。
労働すれば筋肉は疲労するのである。
鍛えても筋肉は疲労するのである。
50歳後半からの健康は、鍛えることと癒すことを並行して行い、一日の疲れはケアを行なってその日のうちに取り、明日へ繋げてゆくことが大切である。

公開日:2018年3月20日 更新日:2018年4月10日 ©