患者様の病態分析

[頸椎ヘルニア] 女性 50歳
頸椎ヘルニアから来る左肩甲骨、腕、肘の激しい痛みが、10回で改善。

主訴

首から左肩甲骨、肘にかけての鋭い痛み。

    随伴症状

  • いくら寝ても疲労が取れない。
  • ストレスから何もする気が起こらない。

現病歴

肩が痛い
左肩甲骨、腕、肘にかけて鋭い痛みが続いて、仕事に支障をきたすようになりました。
整形外科を受診し、MRIの結果、頸椎ヘルニアと診断されました。
首の牽引をして、鎮痛剤を処方されましたが、数日たっても仕事に支障を来すほどの痛みが続いていました。
仕事が忙しく、ストレスが溜まって、腹立たしく思う日々でした。

疲労が取れず、痛みで身体が疲れて何もする気が起こらなくなり、好きな本も読まなくなりました。
早く寝て睡眠をとるようにしておりますが、毎日、疲れております。
病院では、このまま温存するより他はないと言われ、ネットで検索して、当院のホームページを見て、2017年10月5日に来院しました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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    全身的視点から診た筋肉の状態

  • 頸部より肩、肩甲患部の筋群の筋緊張、著明
  • 胸鎖乳突筋、斜角筋群、板状筋、後頭下筋、脊柱起立筋、前鋸筋、上肢帯筋

  • 肘関節
  • 長短橈側手根伸筋、小指総指伸筋、尺側手根伸筋

  • 腰部筋群に著明な緊張を認める。とくに右の腰方形筋、脊髄起立筋

    ~首の徒手検査~

  • スパーリングテスト(陰性)→ 神経根症は認められない。
  • これは、神経根症を判定するのに最も重要な検査法である。

  • ライトテスト(陽性)→ 胸郭出口症候群において陽性になることが多い。
  • 首の側屈テスト、後屈テスト
  • 痛みや痺れ感の誘発・増悪が見られない。

当院での首の徒手検査により得られた情報
首の徒手検査により得られた情報は、頸椎症はあるにしても、現在の症状は、頸椎症の症状ではなく、胸郭出口症候群によるものと判断できる。

中医学による病態の把握
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  • 脈診
  • 渋脈(血液の流れの悪いことを示す)

  • 舌診
  • ・淡紅舌やや紅、白膩苔(苔が多い、水分が停滞し、古い水が体内に長く留まっていることを表す)
    ・舌下静脈の怒張

    血液の流れの悪いことを示す。

    ~臓腑弁証~

  • 肝気鬱滞
  • 肝気が鬱滞し、気・血・水の流れが停滞している。
    そのため、全身の血液の流れが悪化し、水分代謝が悪くなっている。
    精神的には、ストレスが溜まりやすく、気力が低下し何もする気が起こらなくなっている。

    ~気血津液弁証~

  • 気滞証
  • 気のながれが停滞しているため、何もする気が起こらなくなっている。

  • 瘀血症
  • 全身の血液の流れが悪いことが慢性化し、首や肩の凝りが強烈に増強され、神経圧迫を引き起こし、上腕から肘にかけての神経痛を引き起こしている。

  • 痰湿証
  • 身体内の水分代謝が悪く、筋肉や身体の疲労が取れなくなっている。
    水分が停滞すると疾病の回復を著しく遅らせる。

方解

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首・肩および肩甲患部、上肢帯筋に強力な筋緊張を引き起こしています。
腰の筋肉も緊張して疲労しております。

首の運動痛と運動障害はありますが、当院の首の神経根症状を判断する医学的な徒手検査において神経根症は認められませんでした

したがって、首から上腕・肘にかけての神経痛様の鋭い痛みは、MRIで頸椎症は認められるものの、現在の症状は頸椎症からくるものではなく、胸郭出口症候群によるものと私は判断いたしました。

~胸郭出口症候群について~

胸郭出口症候群とは、首や胸郭の筋群が強い緊張を引き起こしたために、頸椎から神経が出てきたところで、神経の圧迫を引き起こし上腕や肘・手指に痛みやしびれを引き起こす病態です。

仕事が忙しく、精神的にも疲労が溜まっています。
腹が立ったり、やる気が起こらなくなるのは、肝気が鬱滞しているためです。

肝気が鬱滞すると、イライラしたり、腹が立ちます。肝気の鬱滞が長引くと、全身の血流が悪くなります。
さらに、水分代謝が低下して、古い水が体内に停滞します。身体の疲労が回復しにくくなり、精神が抑圧され気力もなくなります。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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鍼治療で全身の血流と水分の停滞の改善を行います。肝気を巡らせ、肝気の鬱滞を改善させることで、精神の抑圧を減少させます。
以上で全身の血流と水分代謝が促進されます。
全身の自然回復力を高めることで、局所の緊張を早く改善し神経圧迫を抑制します。

~現代医学の知識を用いての鍼灸治療~
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首の筋肉を緩めるためには、首に鍼をうつだけでは全く首の筋肉の緊張は改善されません。
首の筋肉の緊張を改善させ、神経圧迫を取りのぞくためには、首の筋肉の土台となる腰の筋群、脊柱起立筋、肩背筋群、上肢帯筋の筋緊張を鍼でまず改善させることが大切です。

これらの筋肉が緩めば、首の筋肉の緊張も取れやすくなるのです。
何故なら全身の筋肉は数珠つなぎのようにつながっており、ちょっとした動作も腕や首だけでなく全身の筋肉が同時に働いております。

首という局所の神経圧迫を引き起こすほどの激しい筋緊張を取り除くためには、全身的な視点で筋緊張を取り除くことが不可欠です。

~鍼灸治療でこれらの筋肉を丁寧にほぐし、最後に首の筋緊張を鍼で改善させます~

治療経過

患者様のお声をそのまま記します。

3,4回目の治療

鍼施術で痛みが改善。

9回目の治療

痛みが消失する。

10回目の治療

自覚していなかった右腰深部の痛みや顎の筋肉の凝りが改善。身体全体の調子がよくなる。

私見

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痛みが早く治ったのは、MRIで頸椎症と診断されていましたが、徒手検査では、神経根症は認められませんでした。
したがって、頸椎症(骨の変形や椎間板の繊維化により、椎間板が薄くなった状態)はあっても、今回の症状は頸椎症からのものではなく、筋肉が凝り固まったことから神経圧迫を引き起こした(胸郭出口症候群)ものであったからです。

中医学弁証により証を立てるということは

中医学弁証により証を立てるということは、全身の病態を様々な視点から分析した総合的な病態把握です。

中医学弁証により治療方法が決定される

中医学弁証により治療方法が決定され、最も効果的な経穴を選穴し、全身症状を改善させます。

  • 中医学弁証による鍼治療は、全身のコンディションを改善させ、自然回復力を著しく高めることができるので、局所の病態を改善させることに大いに貢献してくれるのです。
  • 中医学弁証により肝気の鬱滞と瘀血証、湿証であることが分かったので、肝気を巡らし、全身の血流の改善と水分代謝を促進させました。肝気を巡らすことで精神の抑圧を同時に改善するよう努めました。

中医学による鍼灸治療

中医学による鍼灸治療は、身体の病態の根本的な改善と真の健康を作ることを常に根本理念にしています。
気を巡らし、ストレスや抑圧を改善させることも、肉体疲労を取り除くことと同じように大切に考えています。

患者様へのアドバイス

これからは、身体や精神の疲労があまり溜まらないうちに治療をして、いつも元気で健康な状態を保っていきましょう。

公開日:2017年12月7日 更新日:2018年1月22日 ©