患者様の病態分析

[非定形型顔面痛]現代医学的な方法による病態の把握と、中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

初診

2017年12月12日  
55歳 女性

主訴

非定形型顔面痛

随伴症状

  • 首、肩の凝り
  • 腰痛

現病歴

528423今から5年程前、50歳の時、突然、左奥歯辺りが痛くなりました。歯科で奥歯を抜歯したが、痛みは良くならず、焼けるような痛みがのこりました。耳鼻科や神経内科で診てもらったが異常なしと診断されました。それから心療内科に行きました。そこでは抗うつ剤・安定剤・入眠剤が処方されました。痛みは少し柔らぎましたが、根本的には激しい痛みが続き、何も改善されませんでした。

ペインクリニックで
「非定形型顔面痛」との診断を受けました。

痛みが、どんどん増して焼け付くような痛みが続いて、もう一生治らないのではないかと思っていました。歯科・神経内科・心療内科に行きましたが、まったく改善されず、痛い時は家事さえできません。
あちこち転医しながら、最後にペインクリニックに行きました。ここで始めて「非定形型顔面痛」との診断を受けました。

治療は、星状神経節ブロックと抑肝散の漢方薬を処方されました。
この処方を受けて以来、痛みが少しずつ良くなりつつある感じがします。しかし以前より左の腰痛はあったのですが、ここ1年ほど前より、左半身全体に痛みが広がって、足の冷えも強くなってきました。そこで、家の近くの病院の痛み外来に行きました。そこでは、リリカを処方されましたが痛みはまったく改善されず、現在もその症状が続いております。

心配することが長く続き、不眠がちになりました。

616145今年は帯状疱疹にもなりました。
左上顎と口腔の上左奥歯のあたりの歯茎の痛みは、チリチリ、ジンジンし、家で一人でくつろいでいると酷くなります。
寝る前は、痛みがとても強く感じます。
また肩や腰を揉むと、顎の周りがチリチリと神経痛のように痛みます。
何かに集中していると気にならないときもありますが、その時に、首を揉んだりすると、ジーンと痛みが顎に伝わります。
首・肩は、いつも凝っております。

41歳で大阪に主人の転勤のため帰って以来、この10年は仕事(家でプリント添削などの内職)もあり、また趣味で英会話をやっており、英会話はすきでしたが、その役員もしていたので、その役員の仕事は私には責務がとても重く嫌なことでした。
3人の子供がおり、大学受験や高校受験などで心配することが長く続きました。不眠がちで、リーゼ(安定剤)を常に服用しておりました。

根本的に痛みがやわらぐ治療方法がないものかと
原田鍼灸整骨院に来院しました。

5年間続いているこの顎の痛み(口腔の左奥歯上顎の周囲の痛み)と、左半身全体に広がる痛みが出てきて、足は氷のように冷たく感じ、足が冷える症状が続いております。このような身体の状態なので日常生活がもっと楽に普通にできるようになるまで、痛みが改善できたらと考えておりました。もっと日常生活の質を上げたいと思っておりました。根本的に痛みがやわらぐ治療方法がないものかと思っておりました。
そんな折、主人が腰痛や腰仙関節の痛み、身体の歪みの改善のため通院している当院に行くことを勧められました。
そこで、12月14日(木)に当院に来院いたしました。

既往歴

08694640歳の頃より、不安証、不眠症などで心療内科にかかっていました。
35歳から40歳の頃、PTAの役員をしておりました。
役員をすることはとても苦手で、嫌でした。
長男が公立の中学受験で中高一貫の6年制に受かりました。しかし、地元の中学でないことと、やがて主人が転勤することなどを考えるととても不安でした。
主人は仕事が忙しく仕事に没頭していたので、子育ては一人でやってきた感じがいたします。
父は20歳の時他界し、30歳の時、母が亡くなり、相談する人がいなくなったのも不安が続いた原因と感じています。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
byoutai02

  • 現代医学的な病態把握
  • 首、肩背筋群の筋緊張著明。
  • 腰部および臀筋群の筋緊張著明。
  • 腰を押圧すると筋緊張が著明で、本人も痛みを感じる。
  • 左臀部の中殿筋・梨状筋のあたりに著明な筋緊張を認める。

中医学による病態の把握
byoutai04

    舌診

  • 紅舌

  • 厚膩苔で色は黄色。痰濁内停(これは、水分の代謝が悪くなり、体内に水分が長く留まり、古くなって体内水分が粘り、汚れて熱せられていることを示す)。

  • 舌下静脈の怒張
  • 著明(脈絡が網目状になっており怒張がある。
    このことは、体内の血流が慢性的に非常に悪化していることを示す。)

  • 舌尖紅
  • 心火の亢盛を示す(自分の感情よりも、理性に重きを置いて行動する傾向にある)

    脈診

  • 渋脈(全身の血液の流れが悪いことを示す)
  • 90毎分、滑脈(脈が早く、黄膩苔であることから、舌診と合わせて、血液が熱せられていると判断できる)
    顔が赤く熱感がある。足については、本人は氷のように冷たいと感じているが、私が触診してみると、足の先はまったく冷たくはない。
    証は上熱下寒である。体内の陽気、すなわち熱量は十分であり不足していないが、熱が上半身に偏り、下半身に熱が不足している状態である。これは熱の分布に偏りがあることを示す。

    tongue out舌尖が紅(舌の先が赤い)で、心火が亢盛している。心火が亢盛すると、心火が下って腎陽を温め、腎水を蒸騰気化できなくなり、心陰が養われず、心陽を抑えきれなくなる。
    体内の火(心火)と水(腎水)の関係がうまく行かなくなり、心腎不交となる。

    治療法則は交通心腎である。

    心火を瀉し、腎陽を温め、心と腎の交通をはかる。
    経穴は、手の少陰心経の栄穴である少府に鍼で瀉法を施し、心火を瀉し、腎兪に灸を行う。

方解

byoutai09

舌診・脈診より体内水分が長く停滞し、粘って熱せられ汚れて、体内水分がドロドロになっていることが分かる。
重度な痰濁証であり、証は痰濁内停である。

さらに舌下静脈の脈絡の怒張が激しく、重度な血瘀の状態である。すなわち、体内の血液の流れが慢性的に悪化していると判断できる。心火亢盛と肝欝気滞を引き起こしている。

心火亢盛は、不安を増長させ、理性的な判断を低下させる。

また上熱下寒を引き起こす。

肝欝気滞は、感情の起伏が激しく、怒りやイライラをもたらし、精神の抑鬱状態を引き起こす。

舌脈診より熱証であり、体内の陽気、すなわち熱量は十分に存在する。

しかし足が氷のように冷えるのは、気滞証、痰濁証、瘀血症、上熱下寒のためで、本来の陽気不足のためではなく、著しく全身の血液の流れが傷害され、末梢では血流が停滞しているためである。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
byoutai03

    z
    鍼治療で肝気の鬱滞と、心火亢盛を改善させる。

  • 治療法則は、肝気の鬱滞に対しては、疏肝理気を行う。
    経穴は、太衝、合谷、内関を選穴する。
    心火亢盛に対しては、清心瀉火を行う。
    経穴は、少府を選穴する。
  • 気滞、血瘀証に対しては、理気、活血を行う。

  • 経穴は、合谷、太衝、足三里、三陰交を選穴する。
    痰濁証に対しては、足三里、豊隆、三陰交、陰陵泉、合谷、曲池を選穴する。
  • 合谷、曲池で、全身の熱を清熱しながら、水分代謝を促進させる

  • 最も得意な経穴を選穴し、停滞した水分代謝の促進を行う。
  • 肝気の鬱滞と心火亢盛の証を改善させ、精神や感情の安定をはかる。

  • そして身体内の血流の改善や水分代謝の促進を行う。

~非定型形顔面痛について~

非定型形顔面痛は、原因が現代医学的にも明らかにされておらず、専門医も少なく、適切な治療を受けられるまでに何年も要すると言われている。また適切な治療を受けたとしても、痛みは改善するが完治には至らないことが多い疾患であると言われている。

このように改善の難しいこの疾患に対しては、中医学弁証により証をたて、証に基づいて全身的な総合的な病態に対して治療を施す必要がある。そうして悪化した体質改善をはかり、ご本人の生まれながらにして持つ自然回復力を最大限に引き出すことが何より大切なことである。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
あります。
歯茎が腫れて出血 → 楽 → またジンジン →出血
腰、鼠径部、膝、肩など連動して痛い
体調の変化はありますか?
あります。
すごく楽になったり、また痛くなったりする。

第2回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
あります。
治療後半日ほど、だるさ、痛さ → その後、一枚はがれたようにだるさ、痛さが軽くなる。
体調の変化はありますか?
あります。
頭がぼーっとしていたのが、ましになる。家事がはかどりやすい。

第3回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
やや軽くなりました。
左脇腹や左みぞおち、左腹筋が、筋肉痛のようになった(今はやわらいでいる)。
体調の変化はありますか?
やや良くなりました。頭の重さ、身体のだるさがやや改善しました。

第4回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
あります。
波があるが、やや軽くなっている。
体調の変化はありますか?
あります。波があるが、頭のボンヤリ感がましになった。

第5回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
あります。前回と同じように一進一退。
体調の変化はありますか?
あります。一進一退だが、どんどん悪くなっていく不安感がうすれてきました。

第10回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
確実に痛みは和らいでいます。
体調の変化はありますか?
痛みが和らいでいるときは、体調もよいです。冷えも和らぎます。日によって、また一日の中でも上がり下がりがあります。

私見

bensyou
非定型形の顔面痛は、現代医学でも原因不明とされており、検査をしても異常がないため、本気で取り組まれず、精神的に追い込まれるケースが多い
しかし原因不明の痛みは、脳の中の痛みをコントロールしたり、認知したりするシステムに変調が起こって、脳の中で痛みが増幅されたり、勝手につくり出されるのだという事が解明されてきました。
痛み止め(鎮痛薬)は、末梢神経に作用する薬であるため、脳の中で起こる痛みには効果はありません。
脳に働きかける薬である抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不安薬が効果を発揮すると言われています。

心理療法

一日中、痛みの事を考え続けると、いくら薬を服用しても意識が痛みに集中し、神経をさらに刺激して痛みがなかなか改善されなくなります。
このようなケースはよく見られることで、痛みから意識をそらせる認知行動療法などの心理的治療が大切です。

星状神経節ブロック

頸部にある星状神経節に局所麻酔薬を注射したり、レーザー照射を行います。痛みの悪循環を改善させる効果が期待できます。

鍼灸治療、漢方薬

鍼灸治療や漢方薬による治療も有効です。
鍼灸治療や漢方薬の治療は、体質改善や精神安定に効果があり、原因不明の痛みに対しても効果が期待できます。
効果的な現代医学的な治療方法と併用すれば、さらに効果的と言えます。

~当院での治療方針とその内容~

  • 中医学弁証論治により証をたて、証に基づき、証に対して治療を施し、根本原因に対してアプローチし、体質改善を行い疾病の根本改善を行う。
  • 現代医学的な知識を応用して、全身の筋肉の部分部分の疼痛を改善させる。
  • 交流分析に基づき、自律訓練法などを用いて心理療法を施し、精神状態の根本的な安定をはかり、痛みを改善させる。

現代医学的な治療と併用して当院の治療を行い、自然回復力を最大限に高めて、疾病の根本的な改善をはかり、日常生活に差し支えがないところまで、できるだけ短期間で改善させることを、現在の時点での第一目標とする。
そして、次の目標として、疾病の本格的な根本的改善に取り組んでいく。
改善後は症状が起こらないことを持続させ、心地よく生活にハリがあり、健康が感じられるベストなコンディションを維持していくことをお手伝いしていきます。

公開日:2017年12月25日 更新日:2018年1月22日 ©