患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

[慢性頭痛]後頭部が常に重だるく、締め付けられている感じ。

初診

2018年1月12日  
40歳 男性

主訴

16年来の頭痛および全身の筋肉の萎縮緊張

診断名

慢性頭痛

随伴症状

  • 首・肩・胸郭・背中・腰・両ふくらはぎの緊張と痛み
  • 精神的な葛藤と不安がいつもある
  • 全身がだるい

現病歴

zutsuu16年来の頭痛持ちです。
後頭部が常に重だるく、締め付けられている感じです。
頭頂部が張り、頭にいつも緊張感があります。全身の筋肉が緊張、萎縮し、首・肩・背中・腰・両ふくらはぎがとても痛いです。
常に葛藤や不安があり、身体がいつもだるく、どんな薬を飲んでも効果がないので、薬はどんどん強くなって、今服用している薬は、もうこれ以上はないという所まで来ています。脳神経外科では、脳の緊張を和らげる薬と、脳や頭の痛みを感じさせなくするトラムセット、ほかに抗不安剤、抗うつ薬を服用しております。

頭や顔が熱くのぼせ、足が氷のように冷たい

重症化したこの頭痛と身体の緊張と強ばりを何とかしたいと思い、来院しました。食事は、朝は豆乳とバナナのみ、昼はコンビニの弁当、夜は~~です。
すべて外で買ったものを食し、自分で作ることはありません。
食欲も全然ありません。運動は、仕事で動く以外、まったくしていません。小さいときから親からの干渉が強く、親に気に入れられたいという気持ちが今でもあり、不安や葛藤があります。
頭や顔が熱くのぼせ、足が氷のように冷たいです。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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~首・肩・腕・胸郭・背中・腰・両ふくらはぎの筋緊張著明~

  • 首・胸郭  板状筋、肩甲挙筋、前中後斜角筋、後頭下筋
  • 肩・背中・腰  三角筋、上肢帯筋、菱形筋、後背筋、僧帽筋、脊柱起立筋、腰方形筋、腹斜筋、中殿筋、梨状筋
  • 問診時の回答は、理路整然としており、頭脳明晰でクリアである。

中医学による病態の把握
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    舌診

  • 舌体
  • 老舌
    (実証を示し、身体に有害なものが存在することを示す)(気滞・瘀血・痰湿など)

  • 舌色
  • 紅絳舌、紫暗
    (血が熱せられて流れが悪いことを示す)

  • 舌苔
  • 厚膩苔で色は黄色。痰濁内停
    これは、水分の代謝が悪くなり、体内に水分が長く留まり、古くなって体内水分が粘り、汚れて熱せられていることを示す)

  • 舌下静脈の怒張、著明
    脈絡が網目状になっており怒張がある。このことは、体内の血流が慢性的に非常に悪化していることを示す。
  • tongue out

    脈診

  • 毎分72 滑脈
  • 顔や頭が熱く足が非常に冷たい
    (上熱下寒であり、体内の熱が上半身、とくに頭部に偏っていることを示す)
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
  • 痰湿証
    苔は舌全体に厚く広がり、黄色く粘っこくなっている。
    このことより、身体内の水分代謝が悪化し、慢性化して長期にわたり、身体内の水分は汚れて粘り熱せられ、重度の水分代謝障害があると判断する。
  • 瘀血証
    身体内の血液の流れが悪化し、慢性化していると判断する。

~臓腑弁証~

  • 肝気鬱血
  • 心肝火旺
  • 上熱下寒
  • 方解

    byoutai09

    ストレスにより肝の経絡の気の流れが鬱滞し、長期化し、そのため肝気の鬱滞により熱を生じ火となり、肝火の上炎を引き起こしています。肝火は心火を誘って上炎し、心肝火旺となっています。
    理性的な心と主観的な感情が闘いあって、葛藤を引き起こし、心肝火旺の証となり、16年にわたる慢性的な頭痛を引き起こしています。

    また食生活は非常に偏りがあり、ミネラル・ビタミン・たんぱく質・炭水化物のなかで、ミネラル・ビタミン・たんぱく質が不足しています。
    そのため血液は酸性化し、イライラし易くなり、精神葛藤や精神不安を引き起こしています。

    今も親の期待に応えようとする気持ちが会社の中の同僚や上司また友人の中でも親にすり替わり、同じことをくり返しているので、絶えず過剰な頑張りや自責感にさいなまされています。
    このことが肝気の鬱滞や肝火・心火に繋がり、また気滞血瘀(気の流れの鬱滞による血流の低下)痰湿証(体内水分の鬱滞)を引き起こし、精神葛藤や精神不安を常にもたらし、16年におよぶ慢性的な頭痛を引き起こしています。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

    • 鍼治療で肝気の鬱滞と、心火亢盛を改善させる。
      治療法則は、肝気の鬱滞に対しては、 疏肝理気を行う。
      経穴は、太衝、合谷、内関を選穴する。
      肝火や心火に対しては、清瀉肝火・ 清心瀉火を行う。
      経穴は、足の厥陰肝経の行間、手の少陰心経の少府を選穴する。
    • 気滞、血瘀証に対しては、理気活血を行う。
      経穴は、合谷、太衝、足三里、三陰交を選穴する。
      痰濁証に対しては、足三里、豊隆、三陰交、陰陵泉、合谷、曲池を選穴する。
    • 合谷、曲池で、全身の熱を清熱しながら、水分代謝を促進させる
      最も得意な経穴を選穴し、停滞した水分代謝の促進を行う。
    • 肝気の鬱滞と心火亢盛の証を改善させ、精神や感情の安定をはかる。そして身体内の血流の改善や水分代謝の促進を行う。
      上熱下寒(心腎不交)に対しては、鍼で肝火と心火を瀉し、灸で腎陽を温め、交通心腎をはかる。

    治療経過

    患者様のお声をそのまま記します

    第3回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    全体的にへってきました。
    体調の変化はありますか?
    よく寝れています。
    全体的に楽になってきました。

    私見

    bensyou

    頭痛というのは、病名ではなく症状名です。
    頭痛という病気はないのです。
    頭痛は、脳の中にできた腫瘍や動脈瘤のために引き起こされることも稀にありますが、頭痛の原因の90%近くは、精神活動や生活習慣の中で引き起こされるものがほとんどです。
    いくら強い薬を服用して痛みを止めても、その場限りで原因は何ら取り除かれていません。
    なので、ずっと薬を飲み続けることになり、段々と痛み止めの薬が強くなり、ついには今回のように痛みを感じさせなくする薬まで与えられています。
    大切なことは強い薬を用いて痛みを止めることではなく、頭痛を引き起こしている根本原因を取り除くことです。

    今回の患者様の頭痛も、精神葛藤と食生活の不摂生という日常の生活習慣からもたらされたものです。頭痛は、重症な器質的な大きな疾病は何もなく、正常であります。

    体質が健康から病気になる境目まで悪化しているだけで、まだ健康状態と言えます。本人は、最悪の身体の状態と思っていますが、最悪ではなく、病気の狭間にある健康な身体の状態です。本人が生活習慣を直すこと50%、治療が50%のヒフティヒフティの治療で、この頭痛は改善します。
    6ヶ月を目標に、鍼灸で証を改善させ、同時にご本人の精神活動および食生活を中心とした、生活習慣のすべてを改めれば16年来の頭痛持ちという年数に関係なく、改善されるものです。

    前向きな方ですので、ご自身の日常生活の中の特に食事もすぐに改善されているようですので、体質も良くなっていき頭痛の起こりにくい身体をご自身でも作っていかれています。

    公開日:2018年3月1日 更新日:2018年11月5日 ©
    はらだ鍼灸整骨院 院長 原田浩一

    はらだ鍼灸整骨院
    院長 原田浩一

    「[慢性頭痛]後頭部が常に重だるく、締め付けられている感じ。」は
    原田鍼灸整骨 院長 原田浩一が書きました

    鍼灸師・柔整師・カイロブラクター・サイコセラピスト

    (財)東洋医学手技療法師協会認定プロ養成講師

    • 平涼医学高等学校(中国)客員教授
    • 大阪中医学研究会主宰
    • 中国刺絡学会最高顧問
    • 日本心理センター認定サイコセラピスト(理事長 立木 寅雄氏)
    • 近畿療術師会連絡協議会認定カイロブラクター
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