患者様の病態分析

[左足首及びアキレス腱の疼痛](ムエタイの練習で8ヶ月前に傷めた)

初診

2018年1月30日  
53歳 男性

主訴

左足首及びアキレス腱の疼痛

診断名

長母指屈筋及び長趾屈筋の挫傷

随伴症状

  • 起床時、立つと左足首の内側が痛む
  • 歩行時、左アキレス腱の疼痛
  • 左足首を外に開こうとすると左足首の内側が痛む
  • 腰痛

現病歴

deec2d2988275cc41953bbcac9967dc9_s大学で空手道を初め、その後キックボクシングを行いました。ムエタイの世界チャンピオンと闘い、敗退をきっかけにムエタイを学び、現在タイでジムを開いて、ムエタイを教えております。中国拳法など数々の達人から武道を学び、武道家としての道を歩みながら、後輩を育てております。

朝立ち上がって体重をかけたら、
立ち上がれないことがありました。

去年の5月、ムエタイの練習中で選手を鍛えるために、私の左足首の内側で選手のすねを何度も(100回以上)蹴りました。外側で蹴ると強すぎるので、怪我をさせないために内側を使ったのです。その後、左足首をぶつけたり捻ったりすると、左足首の内側が激しく痛みます。朝立ち上がって体重をかけたら、立ち上がれないことがありました。左足の踵をつけて足の先を外側に回すと、足首の内側が痛みます。4日前の練習中に左足首の内側が当たり、歩行時アキレス腱が痛みます。

ムエタイの練習を通して、
心を研くことの大切さを知りました。

muetai昨年の5月より現在まで8ヶ月間、このような状態が続いております。また、1年前に130㎏の相手を右手で持ち上げて、何度も投げ身体を鍛えていたのですが、その後右腰が痛みます。
ムエタイの練習を通して、武道家として強いだけではなく、心を研くことの大切さを知りました。3年前、中学の教員を辞めて、現在志ある若者の中で、心技体揃った本物の心ある武道家を育てるため、タイに移住して、日本とタイを行き来しながら選手を育てております。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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  • 起立しようとすると、左足首内側が痛む
  • 左足の踵をつけてつま先を外側に開こうとすると、左足首内側が痛む
  • 左足首内顆及び三角靭帯の周囲に腫脹を認める(触診による圧痛なし)
  • 屈筋肢体の肥厚を認める(触診による圧痛なし)
  • 長母指屈筋の上3分の1の部分に強い筋緊張と圧痛を認める
    (足弓を保持する、足の指の底屈及び足の回外を行う)
  • 長趾屈筋の上3分の1及び中央部に強い筋緊張と圧痛を認める
    (休脚では指を曲げ、足を底屈に曲げる、足を回外させる。立位では足弓を保護している)

中医学による病態の把握
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    舌診

  • 舌体
  • 良く動き、軽く締まった感じ。(特に異常はなし)

  • 舌色
  • 紅舌(寒熱を問えば、どちらかといえば熱証であることが分かる)

  • 舌苔
  • 全体に広がり、やや苔が多い

    脈診

  • 毎分60 滑脈
  • tongue out

    ~臓腑弁証~

  • 特になし
  • ~気血津液弁証~

  • 痰湿証
    苔は舌全体に薄く広がりやや厚めである。身体内の水分代謝が少し低下している。舌体の状態が良いので、ちょっとした食事療法で改善できる程度。

方解

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~足首の痛い部分が主な要因ではない~
視診で、左足首の内顆及び三角靭帯の周囲の明らかな腫脹、及び屈筋支帯の肥厚が認められる。しかし、触診による圧痛はない。
左足首内側の周囲は、血行や代謝が悪くなり、むくんで腫脹しているので、当たると痛いが、今回の主訴の主な要因ではない。
この部分は代謝が悪くなったため、むくみが継続しているだけである。

~痛みの主な要因は長母指屈筋及び長趾屈筋にある~
主な原因は長母指屈筋及び長趾屈筋の慢性的な緊張・萎縮にある。
筋肉の作用からみて、また筋の起始停止・走行からみて、この筋の腱は足の内側を走り、足底へ出て拇指の末節骨底に終わる。
痛む部位は、これらの筋の走行部位であり、作用からみても原因はこれらの筋にある。
また腓腹筋も慢性的に萎縮・緊張している。足の内側の痛みの主な原因は、この2筋の慢性的な筋緊張である。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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根本原因に対し治療を行えば痛みは改善する
足首の痛みを引き起こす主な原因であるこの2筋の筋緊張を改善させる。腓腹筋の下にあり、深層にある筋肉なので丁寧に浅層からほぐしていく。決して激しい手技を用いない。柔らかく浅層から丁寧にほぐし、深部までほぐしていく。

痛みの部分には根気よく対処療法をつづけるだけでよい。
足首の屈筋支帯の肥厚や内顆及び三角靭帯の周囲の腫脹は、丁寧にマッサージを続け、その後にボルタレンテープなどの炎症をとり、血行を促進するものをはり続けた対処療法を続けることで、対処的にそこのむくみがとれるまで、根気よく続けることで改善される。当たっても痛くなくなる。

そのために全身療法としては、全身の血行を促進させ、水分の代謝を促進させることにある。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
足首の痛みがまったくなくなりました。とても不思議です。
2月7日にタイに帰るので、それまでに何回でも来ますので、根本的な治療をお願いします。

次回は2月1日の予定です。

私見

muetai

競技でいう「勝つか負けるか」にこだわらず、本当の強さを求め、世界を旅し、武道家としての道を歩もうとされています。
本当の強さとは、身体能力や技が磨き抜かれていて、そこに、心が備わった状態だと私は思います。
当クライアントは、心と技を磨いているうちに、それらが合致したとき、自分の身体能力や、技術以上のものが、繰り出せるようになったそうです。

心が備わるとは、腹ができている人間のことで、良心が磨かれているという意味であると私は思います。ご自身は、武道家としての道を限りなく追求しながら、心ある本当の武道家を育てることが、ご自身の仕事であり夢であると言います。私自身、お話をお聞きしていて、多くの共感するものがありました。武道もスポーツ化され、本物の武道家が少なくなった現在、大変に貴重な存在だと思います。

今回の負傷部位の障害を改善して、万全な体調で、志を達成して欲しいと思います。タイと日本を行き来され、次回日本に来られたときに、また来院されたいとのことでした。万全の体調を整えるためにまた喜んで全力で診させて頂きたいと思います。

公開日:2018年1月31日 更新日:2018年2月2日 ©