患者様の病態分析

[左右大腿部の疼痛]首・肩・背中・腰・臀部・太股の疼痛と強ばり

初診

2018年2月15日  
38歳 男性

主訴

首・肩・背中・腰・臀部・太股の疼痛と強ばり

診断名

  • 疲労の積み重ねにより、五臓六腑の生理機能が低下し、気・血・水の流れが悪化し、全身の慢性の筋緊張と筋疲労による疼痛と強ばりを引き起こした。
    そのため、治療しても体調が悪化するばかりで、回復しなくなった。それは、生まれながらにして持つ自然回復力が低下したためである。
  • 内臓にも影響し、胃腸機能が低下した。そのため、食欲がなくなった。

随伴症状

  • 左右大腿部の疼痛
  • 疼痛による睡眠障害

現病歴

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建築の会社の営業職を担っております。昼は外食で仕事の合間に急いで食べるため、どんぶりやパスタなどの単品や揚げ物など、脂っこい物やカロリーの高いものが多くなっています。
数日前、風邪をひいて、風邪が治った後も疲労がたまっていたので、仕事を休みました。そのあと、首・肩・背中・腰・臀部・太股が痛くなり、頭痛が起こりました。整骨院に行って治療して、首の痛みと頭痛は治ったのですが、背中と腰・臀部・両太股の痛みと強ばりが続いて、まったく回復しなくなりました。
胃痛があり、食欲が無くなり、内科に行きました。そこでは、胃腸薬と痛み止めを処方され、痛みは治まりました。しかし、夜、仰向けになって寝ると、背中や腰がすぐ痛くなって、痛みで目が覚めます。
寝返りを打たないと、眠ることができません。自分の体重がかかっている所がすべて痛く、イテテテという痛みで、この体勢は無理という感じで、身体の置き所がありません。腰の下、お尻にかけてズキッとする痛みが走り、両太股が強ばっています。

仕事はストレスも多いのですが、やり甲斐があり嫌いではありません。しかし疲労が蓄積されています。精神的にも気を遣って、疲れています。
いつもの体調とは明らかに異なり、回復しそうもない不安を感じました。母が行って良くなった鍼灸整骨院に行って、鍼灸治療を受けるしかないと思い、来院しました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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以下の筋群に強力な筋緊張を認めます。

  • 頸部筋群(板状筋・頭首半棘筋・前中斜角筋・頸部脊柱起立筋・後頭下筋・胸鎖乳突筋
  • 上腕部(三角筋の萎縮・外内上腕筋間中隔の肥厚
  • 上肢帯筋(棘上筋・胸郭筋・大結節の中間・下・小面
  • 肩背部(僧帽筋・菱形筋群
  • 腰部・臀部(腰部脊柱起立筋・腰方形筋・内外腹斜筋・腹横筋・大臀筋・中臀筋・梨状筋
  • 大腿部(大腿四頭筋・腸脛靱帯・ハムストリングス
  • 下腿部(前脛骨筋・腓腹筋・ヒラメ筋・後脛骨筋・長母指屈筋

中医学による病態の把握
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    ~舌診~

  • 舌体
  • 胖大舌(舌が大きくて分厚くなり、ややプヨプヨしている)

  • 舌色
  • 淡紅舌

  • 舌苔
  • 薄白膩苔・白い苔が舌全体に多く、やや粘っている

  • 舌下静脈の怒張、著明
    脈絡が網目状になっており怒張がある。このことは、体内の血流が慢性的に悪化していることを示す。
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分66 渋脈
  • ~臓腑弁証~

  • 脾気の機能低下による食欲不振と水分の代謝障害。
  • ストレスが長期にわたって少しずつ溜まり、肝気が鬱滞している。
    そのため、全身の血流が悪化し、水分代謝も低下している。
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
  • 痰湿証
    苔は舌全体に薄く広がり、やや粘っこい。
    このことより、身体内の水分代謝が悪化し、慢性化して長期にわたることを示す。
  • 瘀血証
    身体内の全身の血液の流れが低下し、慢性化していると判断する。

方解

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仕事のストレスや緊張で、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積されている。肝気が鬱滞し、全身の気・血・水の流れが停滞している。
さらに肝気の鬱滞は、脾気の生理機能に影響し、胃腸機能の低下を引き起こした。外食などが重なって、脾気がさらに低下し、胃腸痛と食欲不振をもたらした。

肝気の鬱滞により、体表面の血流が低下し、血液による筋肉の滋養ができなくなり、全身的な筋緊張を引き起こしている。
脾気の低下により、体内水分が停滞し、筋肉の深部は栄養されずに粘土状になっている。
筋肉の表面は、繊維が細くなってバリバリと硬く、深部にいくほど粘土状になっていって、気・血・水による筋肉の滋養不足を引き起こしている。五臓六腑の生理機能の低下により、自然回復力が低下し、体調不良を引き起こしているのは明らかである。

自然回復力について

自然回復力とは何か、自然界の川を例にして述べてみる。川は、水が流れる事によって、川の水が汚れる事を自然に防いでいる。自ら行う自浄作用である。
しかし、人間によって栄養価の高い汚水が大量に川に流されると、老廃物が蓄積し、水面下でガスが発生する。それがくり返されると、川の流れは低下し、水は濁る。自浄作用を上回った栄養物が流されるためである。

筋肉の強ばりや痛みがもう回復しないのではと感じたのは、腰や首・肩・臀部・太股などの部分の痛みの原因が重症だからではない。確かに、それぞれの部位は、緊張こそ強く表面の筋肉が強ばり、また深部の筋肉は水分代謝が悪く沼っているが、全身の機能の低下がみられるだけである。
器質的な障害は何も無く、病態は軽症である。
全身の血流と水分代謝を改善することが、何より大切である。鍼灸で五臓六腑の生理機能を改善させ、全身の血流と水分代謝を改善させれば、筋肉の痛みも強ばりも回復する。更に、本来の健康な身体を取り戻すことができる。単に自然回復力の低下による機能的な疾患であるからだ。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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全身の自然回復力を高めれば、部分の機能は回復します。
なので、心身の生理機能を高めていきます。肝気の鬱滞を改善させ、疏泄機能を高め、気・血・水の巡りを良くしていきます。

肝には疏泄という働きがあります。疏泄とは、全身の気の働きや運動の仕組みを調節し、新陳代謝を促進させるということです。疏泄の疏は、流暢の意味で、サラサラとよどみが無く、スムーズに働いている様子を表しており、泄は排泄でスッキリという意味を含んでいます。すなわち、人体を構成している基本物質である気・血・水がスムーズに流れるようになるのです。
使用する経穴は、合谷・太衝・内関で、疏泄を行い、さらに足三里・陰陵泉・三陰交を用いて、気・血・水の流れや水分代謝の促進を行います。

中脘・天枢・足三里を用いて、脾気を高め胃腸の働きを改善させます。脾気が高まると、気・血・水の生成もスムーズに行われます。肝気と脾気を調整することで、自然回復力が高まり心身の疲労や筋肉の痛みや強ばりも改善されるのです。

~鍼灸の対処療法として~

対処的な鍼として、首・肩・腰・臀部・大腿部に鍼を行い、直接。筋肉の緊張や強ばりを改善させて行きます。
局所に鍼を打つことで、局所の血流も改善されます。浅部筋群より深部まで丁寧に鍼を通して痛みの改善に繋げていきます。
舌診・脈診より、本来身体が健康で丈夫な方であることが分かります。上記の治療により、局所の痛みを通して、本姓あるべき健康で丈夫な身体に戻すことが、私の鍼灸治療の使命と考えます。

~局所の痛みと全身症状との関係~

部分は、常に全体の影響を受けています。部分の痛みは、全身の状態の表れなのです。部分の状態を診て、全身の状態を改善させる事が大切です。
川の流れで説明したように、川の一部分の汚れを改善させる為には、川全体の流れの何が、どのような状況が、部分に影響を与えたかを診なければならないのです。
対処療法だけで改善されることも多いのですが、全身の状態を診ることで、部分の痛みを取るだけでなく、健康へと導くことができるのです。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みで目が何度も覚めていましたが、寝返りをうたなくても、朝まで眠ることができました。

第2回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みの強さがマシになっています。

第3回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
全身の痛みが弱くなりました。とくに、あんなに重かった首が動くようになりました。
体調の変化はありますか?
はい。食事にとても気を付けるようになりました。少食の方が体調が良いことに気がつきました。

第4回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
夕方、背中・腰が痛かったが、それ以外は痛みはありません。
体調の変化はありますか?
昨夜はよく眠れました。胃の調子はまだよくないが、普段に近い感覚で身体が動くようになりました。

第5回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?(前回施術後の夜、翌日)
あおむけで寝るのがとても楽になりました。時々腰がカイロをはっているように暖かく感じました。
肩、背中、腰の痛みはまだ感じます。
体調の変化はありますか?
食欲が出てきて、普通に食事ができるようになりました。
量は普通に食べると、胃がもやもや、調子が悪くなります。

第10回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
背中・腰・お尻とも痛みはなくなりました。胃も食べものを制限しているので、そう痛みません。
体調の変化はありますか?
花粉症が一事よりかなりマシです。
その他ご希望があれば、自由にお書きください。
最近、歯を食いしばるくせを意識してても、ゆるめにくい。

第11回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛さはほとんど感じなくなりました。
体調の変化はありますか?
全体的に良好になってきました。食事も他の人と同じ量食べられますが、メニューによっては胃がしんどいと感じます。
~院長の一言~
身体全体の筋肉の疲れや凝りも取れて、痛いところがなくなってきましたね。食べ物も気をつけて良く制限できています。花粉症が一事より良くなり、よかったですね。本来の健康な身体までもう少しです。ゴールが見えてきました。

私見

bensyou
本来の健康で丈夫な身体にすることが私の使命と認識しています。
痛みに対する身体の状態はと言うと、機能的なもので、器質的なものは一切無く、重症ではありません。回復する機能が衰えているだけです。だから、痛みを取ることだけなら、ほんの数回の鍼灸治療で改善されるでしょう。
根本改善が東洋医学の理念であり、醍醐味です。

公開日:2018年3月5日 更新日:2018年4月10日 ©