患者様の病態分析

[五十肩]肩関節がかたまってしまって、上腕が自力でも他力でも90度以上挙がらない

初診

初診 2018年3月12日
49歳 女性 

主訴

肩関節がかたまってしまって、上腕が自力でも他力でも90度以上挙がらない

診断名

  • 五十肩(肩関節拘縮)

随伴症状

  • 首・肩の凝り
  • 腰痛
  • 気分が鬱状態

現病歴

617036左上腕を肩より上に挙げることができません。肩の関節が固まったようになって、肩を水平より上、すなわち90度より上に挙げることができません。台所の仕事でも高いところが届かないので、とても困っています。服を着たり脱いだりするのも大変です。
 
2017年6月くらいから上腕が痛み、整骨院に毎日通いました。11月からは整形外科にも行っていたのに、最初は痛みがあっても真っ直ぐ上に挙がっていた上腕が、150度になり、130度になり、90度以上、挙がらなくなってしまいました。左上腕の挙上が90度までになってからは通院していても、段々悪くなるばかりで、いくら頑張って挙げようとしても、関節がかたまった感じで、全く動かなくなりました。以後、90度以上挙げる事が一度もできなくなりました。整骨院や整形外科に通っていたのに、このような状態になってしまい、残念です。

最近では、整形外科に幾度に手術をすすめられます。医師からだけではなく、リハビリの度に理学療法士の先生にも手術をすすめられ、精神的にも参ってしまいました。医師には手術をした方が良いといわれ、結局大きい病院の紹介状を渡されました。

しかし手術はしたくないので、病院に行く度に言われるので憂鬱になり、病院に行くのが嫌になりました。ネットで必死に探して、五十肩に詳しい病院を調べました。そして当院のホームページに行き当たりました。とても詳しく五十肩の事が紹介され、分かりやすくかかれてありました。また経験も豊富で、多くの症例が記載されていました。藁を掴む思いで、来院いたしました。

最近腰も重だるくなっています。整形外科では痛み止めと胃薬を処方されていますが、効果はありません。10年ほど前から母の看病で疲れ、心身共に疲れ気味です。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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  • 左肩 外転挙上自動で80度、他動でもそれ以上挙上することができない。左肩の肩関節の完全拘縮を引き起こしている。

~下記の筋肉に筋緊張を認める~

  • 上肢帯筋(三角筋、棘上筋、棘下筋)、大胸筋、小胸筋、菱形筋、僧帽筋、頸部筋群、腰部筋群、臀部筋群、脊柱起立筋

中医学による病態の把握
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    ~舌診~

  • 舌体 老舌
  • 舌色、紅舌
  • 舌苔、薄白膩苔、水っぽい
  • 舌下静脈の怒張あり体内の血流が低下し、水分代謝が慢性的に悪化していることを示す
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分、66  滑脈
  • ~臓腑弁証~

  • 肝欝気滞
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
  • 痰湿証
  • 瘀血証

方解

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~全身の体質~

a0259fa42fc798e1d039724c42ca3c4a_m全身の体質としては、瘀血証であり、湿証である。全身の血流と水分代謝が慢性的に悪化している。更に気分が抑鬱され、気の流れも低下している。このような体質の時は免疫力や自然回復力が低下している。すなわち、病気に対して抵抗する力が弱っているので、病気の進行を妨げる力が不足し、病気の進行を許してしまう結果となりがちである。

~五十肩について~

五十肩はエネルギーを持っている。五十肩のエネルギーは求心的に働き、しかも台風のように一定期間停滞する。

一般的に4ヶ月毎に急性期、慢性期、回復期があり、一年間ぐらい症状が続く。エネルギーの強さは、人それぞれ違う。

~関節拘縮を引き起こすのは、急性期の初期の期間に起こる~

関節拘縮を起こすのは、この急性期の期間である。一般に急性期は4ヶ月であるが、6~8ヶ月くらい続くことがある。エネルギーは求心的に働き、筋肉が萎縮し、放置しておくと関節が完全にかたまる。上腕を90度以上挙げられない完全拘縮を引き起こす。これまで頻度はそう高くなかった。

~関節拘縮が始まる期間が早くなっており、頻度も増している~

近年は確実に頻度が増しており、かつ拘縮が早まる傾向にあり、早い人では2ヶ月で拘縮する。1ヶ月で拘縮を起こしそうになった例にも、私は最近遭遇した。

~関節拘縮を防ぐ方法は、全身運動と体質改善。上腕を動かす事~

junbiundou_kata関節拘縮を防ぐためには、五十肩の求心性萎縮のエネルギーを弱体化させる必要がある。その方法で最も良いのは、肩を動かす事である。上腕を動かせば動かすほど、求心性萎縮のエネルギーは消耗する。逆に動かさなければエネルギーを弱体化できないのである。台風のように、人によってエネルギーの強さが違う。

この急性期はとても大切である。予後が良くなるかどうか決定される時期である。この時期に積極的に筋肉を鍼灸治療やマッサージ、物療でゆるめ、尚且つ関節を運動させる必要がある。

多くの患者様はこのことを知らないので、拘縮を引き起こしてしまうのである。専門家が診れば分かる事であり、患者様によく説明して、事態を正しく認識させることが大切である。適切な治療とアドバイスが何より必要である。

~拘縮を起こすと大変です~

一旦拘縮をすると、何をしてもなかなか挙がらず、少なくとも半年~1年の期間は改善されない。日常生活にも大きな負担となる。拘縮してくる人があまりにも多いのは残念だ。

治療方針

~五十肩について~

五十肩は、日々の生活の中で何ら原因がないのに突然のように発症し、激しい痛みで始まり、2週間ほどで痛みが緩和されると、上腕の運動障害が起こる。男女の区別はなく、X線上では何ら異常はない。四十代、五十代に多く発症するので、四十肩、五十肩と言われている。

~五十肩の治癒期間は個々の体質によって、一人一人異なる~

syokuji_tabesugi_woman五十肩は、外傷や打ち身など特定の原因があって起こる運動疾患ではないので、どれくらいで治るという治癒期間が定めにくい。個人によって大きく異なるからだ。何故一人一人治癒期間が異なるのかというと、個々の体質によるものが大きいからである。身体の歪みや新陳代謝の悪化が大きく影響する。日常の食生活や、姿勢、動作、呼吸やストレスなどあらゆるものが影響している。

~どんな酷い五十肩も自然回復する~

しかし、一般的に五十肩は急性期、慢性期、回復期とあり、1年くらいで自然回復する。内臓の働きや新陳代謝が改善し、筋肉や関節の働きとのバランスがとれれば、自然に回復する。

~五十肩になった意味を考える事が大切~

五十肩を治す時、なぜ五十肩になったか、その意味を考える事が大切である。日常生活の中で、食生活や姿勢・動作などを色々なことを見直せということである。身体が全身的な障害である何かを改善しようとして部分に症状を表してくれているのである。

~五十肩と手術について~

症状は教えである。身体の訴えである。手術をして治せば良いというものではない。何故ならば身体自身が行なっている自然回復力を無視して、またそれに反した処置を行えば、必ずどこかでしっぺ返しが別の病気として現れる。

~体質改善を行って、患者様と共に治す~

14ecea81af4a7644d63b31f8cc73a8b7_s当院では五十肩を機会に根本的な体質改善を患者様にお勧めしている。食事や運動を始めとして、生活全てを見直し、患者様にも積極的に参加をして戴いて、一緒に治す事にしている。身体自身が内側から発する声を、しっかりと聞きましょう。

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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まず全身的な体質の改善を行う。瘀血及び湿証の改善である。
そして、気の流れを整える。

以下の経穴を配穴する
合谷・太衝・内関
三陰交・足三里・豊隆・陰陵泉

~五十肩の対処療法~
現代医学的病態の把握による筋群を、
全身的にひとつひとつ丁寧にゆるめていく

~運動療法~

家庭でも日夜、意識して運動療法を行う

  • 筋肉を伸ばすのは30秒、腱をのばすのは1分以上、持続したストレッチを行う
  • 全身的な運動を行う(ウォーキングなど)
  • 簡単なリズム運動を行う(縄を使わない縄跳びなど)
  • 手足を振動させるように動かす
  • 深い呼吸をする(意識して行う)

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
朝まで一度も目が覚めず、久しぶりにぐっすり眠れました。
体調の変化はありますか?
身体も気持ちもスッキリしています。

第2回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
全体の凝りが少しやわらいだように思います。ぐっすり眠れるようになったので、これまでに比べ、とても楽です。
体調の変化はありますか?
朝起きた時、こわばりが減っていました。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
身体全体の凝りをとってほしいです。

第3回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
肩は昨日来なくても、楽になりました。
体調の変化はありますか?
朝、身体が痛くないので気持ちよく起きられます。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同様で、おまかせします。

第4回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
大きな変化ではないのですが、リュックやかばんを肩にかけると痛みがあったのですが、なくなってきていると思います。腰は重だるい感じ。
体調の変化はありますか?
身体の凝りが楽になったせいか、動きやすい。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同じでお願いします。

第5回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
左肩と腕の付け根の前側に痛みがある。
腰はまだ痛みと言うより、重くだるい感じ。
体調の変化はありますか?
肩全体のはっている感じは減ってきたので、楽です。腕を顔に近づける運動がちょっとかたくでやりにくいです。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同じでお願いします。

第6回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
肩:楽になってきたように思います。
腰:痛みと言うより重くてだるい感じがあります。
体調の変化はありますか?
少しずつ楽になっている気がします。
首回りが楽になったと思います。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同じでお願いします。

第7回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
肩:痛みはほとんどないです。寝返りして左肩が下になっても、強い痛みはないです。
腰:だるい感じがまだあります。
体調の変化はありますか?
家族や友人に明るくなったと言われます。自分でも元気になったと思います。最近笑えるようになりました。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同様でお願いします。
~治療経過~
左上腕の挙上が90度をわずかに越して、100度になった。横向きに寝て手を挙げると、眉毛の上まで挙がるようになった。まだまだこれからエネルギーがいるが、ご本人が大変明るくなった事が何より嬉しい。友人や家族からもそのように言われるそうだ。

第8回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
肩:痛みは減ってきていると思います。
腰:重だるさはまだあるものの、痛みは減ってきていると思います。
体調の変化はありますか?
肩全体の凝りがないので(首も)、楽になったのと、寝返りをうっても痛みが減ってきているので、寝られるようになった。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同様でお願いします。

第12回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
肩は通常時に痛みが無くなってきています。スコアで表すと、10→4。
腰はまだ前回と同じくらいの重だるい感じがあります。スコアで表すと、10→5.5か5くらい。
体調の変化はありますか?
先週、気温の変化で体調があまり良くなかったです(少し)。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同様でお願いします。

公開日:2018年4月12日 更新日:2018年5月17日 ©