患者様の病態分析

[ゴルフ肘]男性 会社員 ゴルフ肘の中医学による病態分析と治療

初診

2017年12月4日  
大阪府池田市在住 男性 会社員

主訴

ゴルフ肘

  • 右肘内側の疼痛
  • 左肘外側の疼痛

随伴症状

  • 疲れやすい
  • 慢性的な腰痛もち
  • 身体が異常なほど硬い

現病歴

ゴルフ肘1.jpg一年前から、ゴルフ肘で常に右が痛かった。
最近、左側も痛くなって、日常生活にも支障を来すようになってきた。ゴルフは我慢してやっています。
慢性的な腰痛持ちで、身体が異常なほど硬いです。
インターネットでゴルフ肘を治してくれるところを探したところ、当院を見つけました。
ゴルフ肘は諦めていましたが、治療に対する評価も良かったので行ってみようと思いました。
12月4日、当院に来院いたしました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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    右肘について

  • 右肘内側の痛み
  • 長掌筋、橈側手根屈筋、円回内筋、浅指屈筋、深指屈筋を押圧すると、激しい痛みを生じる。著明な筋緊張を認める。

  • 長掌筋
  • 手首を内側に曲げ、手のひらの内側にある手掌筋膜を緊張させる。

  • 橈側手根屈筋
  • 肘関節での弱い屈曲および回内。手根を内側および親指側に曲げる。

  • 円回内筋
  • 前腕を内側に回し、肘関節を曲げるのを助ける。

  • 浅指屈筋
  • 肘関節を曲げる(力は弱い)。手根の関節と手のひらに近い指の関節を強力に曲げる。

  • 深指屈筋
  • 手根、中手および指の関節を屈曲する。

これらは手首や手根(手のひらを内側に曲げる)および指関節を内側に曲げる筋肉である。

    左肘について

  • 左肘外側の痛み
  • 長短橈側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋のそれぞれの筋間を押圧すると激しい痛みを生じる。
    強い筋緊張を認める。

  • 長橈側手根伸筋
  • 肘関節では肘を曲げる働き(働きは弱い)
    腕を曲げた状態では前腕を内側に回す(働きは弱い)
    腕を伸ばした状態では前腕を外側に回す
    手首を外側に曲げる

  • 短橈側手根伸筋
  • 肘関節を曲げる(働きは弱い)
    手首を外側に曲げる(背側)

  • 総指伸筋
  • 指を伸ばし、扇状に開く
    手首を外側(背側)に曲げる最も強力な働きをする

  • 小指伸筋
  • 五本の指を伸ばし、手首を外側(背側)と尺側(小指側)に曲げる

  • 尺側手根伸筋
  • 前腕を外側に曲げる
    手首を背側に屈曲する
    上記のなかでも、長短橈側手根伸筋の筋溝を押圧すると最も痛みを生じ、最も強い緊張を認める。

~筋肉の筋繊維の性質についての指頭感覚~

キメが細かく、とても柔らかい筋肉で、特筆に値する。

中医学による状態の把握
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    舌診

  • 淡紅舌(気・血が充足していることを示す)

  • 白苔が全体に広がってやや厚い(体内に古い水分が多いことを示す)

  • 舌体
  • 舌本体も水分を含み、分厚くなり大きくなっている(体内の水分代謝が悪くなり、古い水分が多く停滞していることを示す)。

  • 舌下静脈の怒張
  • 舌の裏の2本の血管に脈絡があり、激しい静脈の怒張を認める(身体内の血流が悪いことを示す)

    脈診

  • 渋脈(全身の血液の流れが悪いことを示す)
  • 気の流れが停滞したり、水の流れが停滞すると、全身の血液の流れが悪化し、渋脈を引き起こすことが多い

    ~気・血・津液弁証~

  • 血瘀
  • 血液の流れが悪くなり、血液が汚れている状態

  • 痰湿
  • 体内水分の代謝が悪くなり、古い水分が停滞している
    脾気が弱っていることで起こりやすい

    方解

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    ~中医学理論を用い、中医学弁証を行い、治療方法を確定する~

    普段からお酒をよく飲み、ストレスを発散させているそうである。
    ということは、お酒で上手に発散させているが、ストレスが多いことが分かる

    舌・脈診より重度の血瘀の状態が認められる。

    ストレスからの気滞による血瘀(血液の流れが悪くなって汚れている)と、アルコールの飲み過ぎによる痰湿(体内水分が停滞)の両方を合わせたものによることが想定できる。
    体内水分の停滞については、苔が多いだけでなく、舌本体が分厚く大きくなっているので、かなりの水分の代謝が障害されていると分析できる。

    ~中医学の視点から診る~

    中医学的な視点から診ると部分の筋肉をどう緩めるかということよりも
    全身の血液の流れの改善と水分代謝を促進し、新陳代謝を高めることが何よりも大切である。

    ~それは何故でしょうか~

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    何故なら、川で例えて言うと、流れの良い川だと、川の水の流れを引き込めば、部分の汚れは簡単に解決する。しかし、流れの悪い川の一部分の汚れを改善させることは、川の水の流れを引き込んでも、もとも流れが弱いので、部分の汚れはなかなか綺麗にはならない。

    テニス肘で右肘では、右側内側の筋群に強い筋緊張を認め、左肘では、左側外側の筋群に強い筋緊張を認める。

    ~慢性的に緊張した筋肉は、どのようになっているでしょうか?~

    慢性的に緊張した筋肉は緊張し、血管が収縮して血液の流れは、著しく低下している。そのうえ、体内の水分は筋肉に停滞しやすい。そのため筋肉は著しく弾力を失い、正常に伸び縮みができない状態になる。すなわち、筋肉が粘土のようになってしまい、筋肉の運動能力が低下する。それは、自然界で常に湿気ている所は通気が悪かったり、水分代謝が悪い条件があるのと同じである。

    ~最短で筋肉を柔らかくするには~

    テニス肘により、緊張した筋肉を最短で柔らかく改善させるためには、全身の血流の改善と水分代謝を促進させることが一番大切である。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
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ストレスを発散して長くもってはいないにしても、ストレスがあると気の流れは一時的に停滞する。

~気の流れは、血に影響し、全身の血流を悪化させる~

428752だから、まず気の流れを改善させ促進させることが大切である。
気の巡りが良くなると血は巡り、水も巡る
かつストレスも改善されるので、アルコールの飲み過ぎの改善にも繋がる。
気の停滞は、ストレスの矢面にたって働く肝気の鬱滞を引き起こす。
肝気が鬱滞すると、全身の気・血・水の流れは低下する。
脾に影響すると、水分の代謝が悪くなり、体内水分が停滞する。
血に影響すると全身の血流が悪くなる。
全身症状を改善させるために、肝気の鬱滞を取り除き、脾気を強め、気・血・水の流れを良くすることが大切である。
肝気の鬱滞を取り除く法則を疏肝理気という。
主な経穴は、太衝・合谷・内関・陽陵泉・期門などから選穴する。
気・血・水を巡らすツボは、足三里、三陰交が適している。
体内水分の新陳代謝を良くするツボは、豊隆・陰陵泉である。
これらの特別な経穴を中医学弁証により導き出し、全身症状を改善させることによりゴルフ肘を最短で改善させることができる。

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中医学弁証で全身症状を改善させる鍼治療を行った後、
現代医学的な知識を用いての鍼灸治療を行う。
全身治療のための鍼を配穴し置針した後に、局所の治療を行う。すなわち、全身症状を改善させるのと併行して、局所の治療を行うのである。

~現代医学的な知識を用いての鍼灸治療~
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その筋肉は、冒頭の現代医学的な病態把握のところでくわしく述べたので、参照してほしい。こうして特定した右肘の筋群および左側の筋群を一つ一つ丁寧に緩めて行くのである。

~鍼の治療には、高度な知識が必要である~

効果的な鍼をするためには、的確な深さと刺入速度や強さの加減が大切で、筋肉の硬結を見つけたら、カーテンから手を放さないように手を押したり引いたりする技術が必要である。これを面取りという。

~面取りについて~

筋肉の硬結を見つけたら、硬結を突き抜けても離れてもいけない。
硬結の中に刺入し、押したり引いたりして、筋肉をバネのように伸ばしたり縮めたりしながら筋肉を緩めて行くのである。
筋肉が緩むのを指頭感覚で感じながら、丁寧に手技を施す。

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よく使う鍼は、髪の毛ほどの細さで0.12ミリである。

筋肉に刺入したあと、鍼の先に感じる垂直圧と横側に受ける水平圧を指頭感覚で感じながら鍼を巧みに操作する必要がある。
学校を卒業してから、鍼を通し指頭感覚を鍛え、針先で筋肉を生きものと気を合わせて仲良く戯れるようになるためには、最低でも5年以上の厳しい修行が必要になってくる。

治療経過

初回の治療

初回の治療で、噓のように痛みが軽減された。
日常生活にも支障を来していたのが、日常生活ではまったく痛みを感じなくなった。

2回目の治療

一回目の治療の後にゴルフのラウンドを行った。
さすがにゴルフのプレー中は、肘が痛くなったが、右肘内側の痛みは消失したそうである。本日は、私も触診して確認したが、驚いたことに筋肉の硬結がほとんど無くなり、筋肉が随分、和らいでいた。
左肘の外側はまだまだ痛みが残存しているということである。
触診して診ると、筋肉の緊張が著しく、少し腫脹が認められた。そのため押圧すると酷く痛がった。冒頭の「現代医学の病態把握」のところで記した、一つ一つの筋肉を丁寧にほぐしていった。その後の触診により、かなり筋肉が緩んだことを確認した。治療に対して素直に良い反応を示してくれる筋肉である。キメの細かい本来耐久力のある筋肉であることを認識した。

私見

bensyou症状の割に予想より早く改善しているのは、中医学弁証論治により全身症状を改善させる治療をおこなったことによる。全身症状に潜む問題点は瘀血・痰湿であった。そこで、体内の血液の流れと水分の代謝を促進させ、部分の血液の流れと停滞した水分の代謝を促進させることにした。

加えて、患者様の筋肉は、質がキメ細かく、耐久力があり、本来、運動能力の高い筋肉である。だから、治療に対してとても素直に筋肉が反応してくれる。

週一回の練習と月二回のラウンドを行い、ゴルフが何より好きで取りくんでおられる。そのため、上腕・前腕・肘に直接関係する筋肉だけでなく、全身の筋肉がバランス良く発達している。とてもスポーツをすることにおいて良い体質と言える。
予想より痛みが早く改善しているのは、それらの要素が相乗的に効果を高めていると判断する。

公開日:2017年12月11日 更新日:2018年1月22日 ©