認知症にならないために

物忘れ、集中力低下への不安と心身のケア

物忘れがひどくなった、集中力がない、心から楽しめない、最近この記憶障害が心配だ、これは認知症の入り口なのでは?という不安は私もよくわかります。

私は患者様を診る時に、病気が発生した要因を心身両面から診ていきます。すべての病気に心的要因が影響していると言っても過言ではありません。病気になると、どんな病気なのか、治るのか治らないのか、治るまでにどのぐらい時間がかかるのか、など誰もが知りたいことです。

なかなか治らない頑固な疾病ほど、不安や葛藤、絶望や孤独感を何度も経験しています。経過が長くなるにつれ、体力が疲弊し、呼吸力も浅くなっています。集中力や考える力、判断力も低下していきます。

鍼灸治療によって、五臓の生理機能と気血水の流れが整うと、体調と気持ちに変化が現れます。心と身体の機能が少しでも回復すると、希望が出てくるのです。

さらに、病気についてしっかりと認識できると、自分でも対処できることがあることを理解できます。

例えば、体力が疲弊し、浅くなった呼吸も改善できるのです。ヨガ式呼吸リハビリで身体を支える筋肉が強くなるだけではなく、呼吸力が強くなります。呼吸力=体力なのです。体力=生活力ですので、自分でも直そうという気持ちが湧いてくるのです。

鍼灸治療に合わせて、家庭でもヨガリハビリを自分でやるようになっていきます。こうなっていくと、患者様がハツラツとなっていく姿を私はたくさん見てきました。

生活習慣から認知症が発症する

認知症の発症には日々の生活習慣が深く関わっています。最新の研究(2024年のランセット委員会報告など)では、認知症症例の約45%は、生活習慣を含む「修正可能な要因」を改善することで予防または発症を遅らせることができるとされています。

認知症にならないためには、まだ行けると思わないで、症状が進んでいくこの段階で1日でも早く対処することが大切です。

生活習慣を見直すための対処法を書いていきますので、ぜひ生活の中で実践してください。

偏った日常生活を見直すチェックリスト

この中で当てはまることがあったら、1つでも改善していきましょう。

  • ① 刺激や変化のない生活・生きがいややりがいを感じられない生活
  • ② 孤立感や孤独感を感じる生活
  • ③ 栄養バランスの取れていない食事、運動不足
  • ④ アルコールの飲み過ぎ、睡眠の不足
  • ⑤ 狭くなっていく対人関係(自分の心を打ち明けれるパートナーや家族、友人、仲間が減ってきた)
  • ⑥ ストレスが溜まっていきストレスの解消ができない、愛情を感じたり愛情を捧げる対象がいない

① 刺激や変化のない生活、生きがいややりがいを感じられない生活

ずっと同じ変わらない生活を続けていると、生きがいややりがいを得られにくいと思います。いくつになっても、挑戦することや、夢中になれるものを見つけることが大切です。夢中になったり、ワクワクすることで、脳からは挑戦する気持ちや生きがいを感じる脳内伝達物質が活性化されます。

難しいことでなくても良いのです。自分が一番やりたいこと思うことをできるだけたくさん紙に書いて、順位をつけると、一番やりたいものが見えてきます。

② 孤立感や孤独を感じる生活

犬や猫、小鳥、熱帯魚や金魚、ハムスター、トカゲなどの爬虫類など愛情を注ぐ対象ならなんでもいいです。例えば、犬を飼うことで、オキトシン効果が犬にも人間にも出て、双方が長生きするという研究報告がなされており、愛情を注ぐ、そそがれることの大切さが証明されています。

病気の症状が一進一退の生活を長い間続けていると、不安や葛藤、心配、怒りや失望、絶望や孤独感をいやというほど味わっています。中医学と鍼灸治療によって、この気持ちに寄り添って、患者様に自信と勇気を与えるのが私の仕事です。

③ 食事:脳を守る栄養素

まずバランスがとれた食事が必要です。タンパク質、炭水化物、脂肪、ミネラル、ビタミンです。食生活で以下の効果を目指します。

  • 抗酸化作用
  • 脳の老廃物を取り除く
  • 老化を防ぐ

ゴミが溜まると固まってとれなくなるため、毎日活性化させて取り除く必要があります。

そのためには、魚中心の生活(魚の油はオメガ3)がおすすめです。緑黄色野菜の中には脳の酸化を防ぐ成分がいっぱい含まれています。

良質なオイルも必要です。エゴマ油が一番良いと言われていますが、オリーブオイルもおすすめです。料理しやすく熱にも強く、手に入りやすく味に癖もありません。他にも、ナッツ類(特にくるみ)、ブルーベリーやいちごなどのベリー系、納豆や豆腐、おから、油揚げなどの大豆加工食品を摂ると良いです。

豆腐にも生姜を擦って、ネギとじゃこ、ゴマなどを乗せて食することを勧めています。簡単ですし、ビタミンやカルシウム、油分も同時に摂取できます。納豆にネギや卵をのせると、より栄養価が高まります。卵は特に勧められている良質なタンパク質の1つです。

注目のスパイス:ターメリック(ウコン)

最近注目されているのが、ターメリックです。インド人に認知症が少ないのはターメリックがたくさん含まれているカレーを日常的に食べているからといわれています。

ターメリックに含まれる主成分クルクミンには以下の効果が期待されています。

  • アミロイドβの蓄積抑制:認知症の原因とされる脳内のタンパク質の蓄積を抑え、分解を促進。
  • 強力な抗酸化・抗炎症作用:脳内の慢性的な炎症や酸化ストレスを抑え、神経細胞の損傷を防ぐ。
  • 記憶力の維持・改善:特定の臨床試験において、認知機能の低下が有意に抑えられたという報告あり。
  • 症状の緩和:すでに発症している患者において、焦燥感や不安などの行動・心理症状(BPSD)が改善した報告も。

ターメリックは、黒胡椒に含まれる成分「ピペリン」と一緒に摂ると吸収率が劇的に高まります。さらにクルクミンは脂溶性(油に溶けやすい)のため、オリーブオイルやバターを使った料理に黒胡椒と共に添えると効率的です。

【私の体験談】
実は私も数ヶ月前から、よく物忘れをするようになりました。気のせいだと放っておいたのですが、だんだんひどくなって怖くなってきたのです。母親の認知症にずっと寄り添ってきたからこそ、「認知症になるな」と母が示してくれたのだと思います。
私はちょうど2ヶ月前から、味噌汁、煮焚きものに「ターメリック、黒胡椒、オリーブオイル」を入れるようになりました。2ヶ月経って、記憶力が少しよくなってきた感触があります。思い出そうといくら考えても思い出せなかったものが、思い出せるようになってきたのです。
摂取目安:1日3g(小さじ一杯が約1.8gなので、小さじ2杯弱まで)。体調に合わせて小さじ一杯程度から様子を見てください。

④ 運動:インターバルウォーキング

1日20-30分の適度な運動をおすすめします。

「3分間ゆっくり歩いて、次の3分間は大股で速く歩く」
これを1クール(6分)として、5回繰り返すと30分です。これをインターバルウォーキングと呼びます。

  • 細胞内のミトコンドリアが増加
  • 心肺機能を高め、血圧の上昇を抑える
  • 筋肉の増強

逆に、だらだらと長時間歩き続けるだけでは、筋肉が硬化し、心肺機能に負担をかけることがあります。
おすすめは、ゆっくり歌を歌いながら、俳句を考えながら、景色を楽しみにながら歩くこと。吐く息が主体となり副交感神経が活性化され、脳内で気持ちを安定させる伝達物質が活性化されます。

⑤ 睡眠:21時〜23時のゴールデンタイム

21〜23時に寝る「早寝派」は、遅く寝る人よりも以下の3つの点で有利です。

  1. 成長ホルモンの分泌最大化:入眠直後の「深いノンレム睡眠」が深夜0時前後に来ることで、細胞修復や疲労回復を促すホルモンが効率的に分泌されます。
  2. 自律神経の切り替え:早めの就寝でリラックスモード(副交感神経)へスムーズに切り替わります。
  3. 睡眠時間の確保:単純に睡眠不足を防ぎ、疲労蓄積を回避できます。

睡眠は単なる休息ではなく、脳に溜まった情報の整理や老廃物の排出といった「修復作業」の時間です。大谷選手も睡眠を大切にしていますが、良い睡眠をとることは、生命維持のために私たち一人一人が果たすべき責任です。

⑥ アルコール:適量を守る

「酒は百薬の長」と言われるのは適量の場合です。適量を超えて毎日摂取するとAGE(終末糖化産物)がたまり、認知症の大敵となります。

【1日の適度な飲酒量目安(純アルコール20g程度)】

  • ビール(5%): ロング缶1本(500ml)
  • 日本酒(15%): 1合(180ml)
  • 焼酎(25%): 約0.6合(約110ml)
  • ウイスキー(40%): ダブル1杯(60ml)
  • ワイン(12%): グラス2杯弱(約200ml)

※女性や、顔が赤くなる体質の方はこの半分以下が推奨されます。
※週に少なくとも2日は休肝日を設けましょう。

⑦ 対人関係とストレスケア

狭くなっていく対人関係への対策
退職後、人と会う機会が減っていませんか? 自分の心を打ち明けられるパートナー、親友、仲間は心の支えです。ペットや趣味を通じて人との交流を増やすのも良いでしょう。人との触れ合いは脳への刺激となり、行動力を生み出します。まずは挨拶から始めてみましょう。

ストレス発散には「15〜20分の運動」
ストレス解消には、身体を動かすことが推奨されます。1分間のその場駆け足や、エア縄跳び、腰振り運動など、リズム良く動きましょう。

私の経験では、開始15分まではしんどく感じても、15分を過ぎるとだんだん楽になり、20分後には脳の神経の疲れが取れてすっかり元気になります。身体を動かすことで吐く息が主体となり、副交感神経が優位になるためです。

生きがい・やりがい

人生には目標や目的が必要です。小さな目標で構いません。階段を一段ずつ上がるように、成功体験を積み重ねていくのです。
「自分はここまでやったのだからできる」という自信が、さらなる意欲と喜びを生み出します。

筆者
はらだ鍼灸整骨院 院長 原田浩一
"はり・灸と健康は仲がいい"

詳しいプロフィールを見る