顎関節症の痛みを「つぼストレッチ」で改善
-中医学の視点から見る顎関節症のストレッチ方法-

筆者
はらだ鍼灸整骨院 院長 原田浩一
"はり・灸と健康は仲がいい"

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顎関節症にストレッチの効果はありますか?


はい、大変に効果があります。
何故なら、顎関節症は、口を大きく開けたり閉めたりする時に働く筋肉が緊張して、カチカチに固まって、顎の関節が動きにくくなって顎関節症になっているからです。

口を開ける筋肉は、頚(くび)の前側にあり、顎(あご)の下から舌骨、舌骨から胸骨や肩甲骨に付着しています。

舌骨は頸椎に付着しているので,頸椎が歪むと舌骨も歪むので、口が開けにくくなります。ですので、頸椎を矯正するストレッチも有効です。

さらに胸骨や肩甲骨に付着しているので、口を開ける筋肉である開口筋は肩こりの影響なども受けるのです。だから肩甲骨を動かし、肩背部の筋肉のストレッチも有効です。

しかしながら最も大切なのは、口を閉じる筋肉である閉口筋(咀嚼筋)です。
咀嚼筋が緊張萎縮すると、開口筋が働いても口を開けることが出来ません。閉口筋は、物を噛むための筋肉であり、開口筋より遙かに強い力を持っているからです。

食べ物を口に入れて咀嚼する時には、この閉口筋である咀嚼筋が主に働きます。
咀嚼筋は側頭筋・咬筋・内側・外側翼突筋から成り立っています。

主にストレッチは、上記の咀嚼筋に対して行います。

顎関節の緊張を緩める効果がある咀嚼筋へのつぼストレッチ

1.口を閉じる最強の筋肉である側頭筋を緩めるつぼストレッチ

側頭筋を緩めるストレッチで刺激するツボ

ウィキメディア・コモンズより引用

こめかみに手を当てて、奥歯を噛み締めると動く筋肉を側頭筋と言います。その動く筋肉の上にある頷厭(がんえん)というツボと、その近くには、けんしょう、けんろ、そっこつなど、顎関節症に有効なツボが沢山あります。ツボを指1本で押すというよりも、もっと良い方法をお伝えします。

側頭筋を緩めるつぼストレッチの方法

こめかみに手を当て奥歯を噛みしめると動く筋肉があります。それが側頭筋です。
拳を握り、左右のこめかみの窪みに当てます。左右から圧を加えながら、拳を上下に動かします。
目の疲れや頭の緊張が取れて、とても気持ちよいですよ。段々と気持ちが緩んできます。

気持ちよい状態で、上下に拳を動かし、さらに回転を加えます。筋肉が緩んでリラックスするのが、良く分かります。

2、リラックス効果の最も高い前頭筋・頭長筋に対するストレッチ

~咀嚼筋を緩める大きな手助けとなります~

前頭筋・頭長筋を緩めるストレッチで刺激するツボ

頭頂部には、百会といって、上がった気を引き下げ緊張を取り除く最良のツボがあります。
中医学による鍼灸治療でよく使うツボです。大変大きなリラックス効果があり、頬にある咀嚼筋を緩める大きな手助けとなります。
指1本で押すならば百会ですが、頭部には有効なツボが沢山並んでいるので、もっと有効な方法があります。
[心を安定させるツボ「百会」]

前頭筋・頭長筋に対するツボストレッチの方法

手を広げて、左右の指をそれぞれ交叉させ、掌底(手のひらの下の肉の厚い部分)を左右に開き、三角形を作り、掌底を頭頂骨に当てます。頭皮を左右から挟み、正中線に引き寄せます。

正中線に引き寄せると、頭部を垂直に指圧した効果が生まれます。弱い力でOKなので楽にどなたでもできますよ。

正中線に向かって、頭の前から後ろまで同じ動作で頭皮を引き寄せていきます。

3.口を閉じる強い筋肉である咬筋のつぼストレッチ

口を閉じる強い筋肉である咬筋を緩めるツボ

ウィキメディア・コモンズより引用

 
 強く噛むと頬の横の膨れる部分に手を当てます。これが咬筋です。
その中心にあるツボが頬車(きょうしゃ)です。唇の横、頬の下中央にあります。
その下にも、大迎(だいげい)というツボがあります。

口を閉じる強い筋肉である咬筋のつぼストレッチの方法

強く噛むと頬の横の膨れる部分に手を当てます。唇の横、頬の下中央にあります。
人差し指と中指をあて、軽く圧します。

心地よい感覚を感じながらほぐしてゆきます。指を回転させたりして、心地よい刺激をさぐってください。
この心地よい刺激で筋肉が緩むのです。

4.顎を前に出したり、左右に動かす筋肉へのストレッチ

~内側・外側翼突筋へのアプローチ~

内側・外側翼突筋を緩めるツボ


顎を前に出したり、左右に動かす筋肉を>内側・外側翼突筋と言います。ストレッチの場所は、頬骨突起の上部と下部に対して行います。
頬骨突起は頬の最もふくらんだ部分の横、耳に寄ったところにあります。骨は人差し指ぐらいの太さです。骨の上と下で触れるのが、外側翼突筋です。
その骨の上にあるのが、「上関」というツボです。下にあるのが「下関」というツボです。

顎を前に出したり、左右に動かす筋肉へのストレッチの方法

頬骨突起を親指の先と人差し指の内側横で、挟みます。柔らかく圧を加えて、心地よくなるまで圧を保持します。痛た気持ち良い刺激を感じると思います。常に痛快の「快」を優先させ、圧を加えます。最初は口を閉じて行います。

筋肉が緩んできたら、口を開けて圧を加えます。刺激が強くなりすぎないように「快」を優先して行います。この点、気を付けて下さい。

筋肉に対する指圧・マッサージ・ストレッチを行ない、その後に関節の動きをよくする骨に対してストレッチを行います。とても有効ですよ。

☆頸椎の捻れを改善するストレッチとツボ刺激

頚椎のねじれの改善に効果があるツボ

乳様突起の前下方、胸鎖乳突筋のすぐ内側にある「翳風(えいふう):」というツボを押圧します。このツボは、抑えるととても痛いので分かりやすいツボです。なぜ痛いかというと、強く緊張委縮しているからで、誰でも痛いと思います。ここを押すことで、胸鎖乳突筋や斜角筋の緊張が改善されます。これにより、首を左右に回旋させる機能が改善されます。多くの人はどちらかに偏りがちですので、頚椎が回旋してそれに伴って舌骨が回旋するのです。舌骨が回旋すると、開口筋が舌骨についているため、口が開けにくくなるのです。この回旋異常を改善させるだけで、口が開きやすくなることも多く見られます。

頸椎の捻れを改善するストレッチとツボ刺激の方法

①耳のすぐ後ろ、側頭骨の下部に突き出た骨(乳様突起)があります。耳の後ろから乳様突起の下部に向かって親指をあて、押圧します。頭を指の方に傾げても刺激は同じようになります。狭窄乳突筋の付着部です。狭窄乳突筋が緩んで、頚椎のゆがみが改善され、その結果として舌骨のゆがみが改善され、口が開きやすくなるのです。

②頚を左右に回旋させます。左右どちらが捻りにくいか、確認します。
頸椎は、左右、どちらか動かしやすい方に捻れています。

頸椎は、動かしやすい方に捻れていますので、動かしやすい方と反対側に頚を回旋させ、ストレッチを行います。何度か繰りかえし、動かしやすい方に近づくように、回旋のストレッチを試みます。

この時、ポイントは、息を吐きながら行うことです。そして一回のストレッチは、1分を目安に息を吐きながら、ゆっくり行います。

☆肩甲骨を動かし、肩こりを改善させるストレッチ


両手の肘を曲げ、指先を肩の前部にあて、肘の先を内から外に円を描くように回し、肩甲骨を動かします。今度は反対に、外から内にを繰り返します。
内と外を交互にやっても構いません。内・外、10回繰り返します。

この時のポイントは、声を出して数を数えながら元気よく行いましょう。

顎関節症の改善には、頚や肩のコリを治すことがとても大切です。
頚や肩のコリを改善させると、肉体疲労も改善されるからです。
肉体疲労を取り除くと、精神疲労も軽くなります。

※ただ頚・肩のストレッチは、これだけでは充分ではありません。
後日、記す頚・肩のコリを改善させるストレッチをご参照ください。

下顎の運動を行う、二つのストレッチも有効です

~下顎の運動をしましょう~

①顎を左右に動かす

口をできる範囲で大きく開き、下顎を左右にゆっくりと動かします。その動作を5往復、繰り返します。30~40秒ぐらいです。

②顎を前に動かす

下顎を前にできるだけ突きだし、ゆっくり大きく口を開きます。これを5回、繰り返します。

これらは、咀嚼する時に行なっている顎の運動です。

ストレッチで効果を上げるために大切なことがあります

気持ちよく、ゆっくりと状態に合わせて行うことです。「痛快」すなわち痛みが多少出ても、常に「痛」に対して「快」が強く、心地よい状態で行うことが大切です。頑張りすぎると逆に炎症を起こすことがあります。

ストレッチのタイミング(頻度)

空いた時間でストレッチするのが効果的。
落ち着いた気分で、ゆっくり行いましょう!効果てきめんですよ。

まとめ

顎関節症には、気持ちよくストレッチすることが重要です。

もっと深く知りたい方へ


顎関節の構造や動きについて、もっと深く知りたい方は、以下をご覧下さい。

顎関節は、頭蓋骨の側面にある側頭骨の窪みに下顎の骨の先端、下顎頭(かがくとう)が入り込む形で成り立っています。骨と骨の間には関節円板という硬い繊維組織があり、これがクッションの働きを果たしています。

顎関節の構成

物を食べる時、口を大きく開きますね。
口を開ける時、左右の下顎頭が前に出ます。

人差し指と中指を耳の穴の前に当てます。口を開けると、人差し指から中指に下顎頭が移動し、中指に当たるのが分かります。口を大きく開き、最大開口した時に、左右同時に顎関節が前方に移動し、中指に当たるのが正常な状態です。

開口筋(前頸筋群)

前頸筋群には、舌骨上筋と舌骨下筋があります。口の開口には、舌骨上筋が主に働き、舌骨下筋が補佐しています。舌骨上筋と舌骨下筋は、頚の前にある筋肉なので前頚筋群に属します。

舌骨上筋群

口を開ける筋肉は、開口筋と呼ばれ、顎の下から舌骨に付着しています。舌骨上筋と呼ばれ、顎舌骨筋・顎二腹筋・オトガイ舌骨筋があります。

舌骨下筋群

舌骨から胸骨・肩甲骨に付着しています。舌骨下筋と呼ばれ、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋があります。
開口時、舌骨を固定し、舌骨上筋の働きを補佐します。

咀嚼する時

食べ物を咀嚼する時は、口をもぐもぐと動かしていますよね。
食べ物を咀嚼するためには、下顎が前後左右に揺れ動いて複雑な動きをしています。
まず咀嚼するためには、口を開きます。下顎を左右に動かす必要があるため、左右のどちらか一方の下顎頭が前に滑り出し、同時に下顎が前に出ます。この連続でものを噛んでいます。

以上の詳しい説明で、上記のストレッチが有効なわけがおわかり頂けたかと思います。
もしストレッチでも状態が良くならない場合は、ぜひ当院にいらしてください。

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