厚生労働省の「国民生活基礎調査」(平性28年度のデータ)によると、男性では「腰痛」での有訴者率が最も高く、次いで「肩こり」で、女性では「肩こり」が最も高く、次いで「腰痛」、「手足の関節が痛む」となっています。
(データ元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf)
つまり女性では、肩こりが第一位、男性でも第二位となっています。
一般社団法人、日本臨床内科医会によると、「こんなときはすぐに受診! ~危険な肩こりとは~」という記事があります。要点を示せば、以下のようです。
1.運動した時に肩が痛む・・・・狭心症の可能性があります
2.手の痺れや麻痺を伴う・・・・頚や肩の神経・血管が圧迫されているときの症状です
3.頚や肩を動かしていないのに痛む・・・骨の異常や内臓の病気かも知れません
4.徐々に症状がひどくなる・・・進行性の病気が考えられます。例えば、がんなどです
http://www.japha.jp/doc/byoki/047.pdf
肩こりは日常生活の悪い習慣を直せという、有難い教えでもある
日常、我々が経験する肩こりは、マイナスに捉えれば、痛みなどの不調部分に目がいきがちですが、プラスにとらえると、身体の異常を示す身体からの訴えであり、お知らせなのです。
姿勢が悪い、食べすぎ、睡眠不足、心身疲労などを教えてくれています。
なので、この段階で肩こりの背景となる原因に気づけば、未病のうちに対処できることがほとんどです。すなわち大きな病気になる前に対処できるのです。
その原因は、大抵は日常生活、習慣のなかにあるので、プラスに捉えて対応しましょう。
またオムロンの「ヘルスケア」によると、「肩こりの5つの原因と予防策」という記事があります。要点を示せば、以下のようです。
1.日本人は欧米人と比べると、頭が大きい割に首から肩の骨格や筋肉がきゃしゃにできているため、肩こりを起こしやすい。
2.同じ姿勢と眼精疲労
パソコンや読書、手仕事などの時、多くの方は首を少し前に突き出す姿勢になっている。こうした姿勢を続けていると、首から肩に緊張性の疲労が生じ、血流が悪くなり肩こりを起こす。パソコンの場合、光源を見つめるのと同じなので、目が常に緊張を強いられ、まばたきの回数が減ります。通常は、毎分15~20回程度、パソコン作業中は、毎分1・2回に激減。そのため、ドライアイから眼精疲労を起こし、それも肩こりの原因となります。
3.運動不足とストレス
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/92.html
ちょっと考えるだけでも肩こりの原因は、他にもまだあります。
1.猫背や0脚、腰椎の前弯過多や後弯、ストレートネック
2.食生活のアンバランスによる胃腸障害や便秘などの内臓性のもの
3.呼吸筋の緊張・萎縮による浅い呼吸
4.過労や睡眠不足による慢性疲労
5.身体を締め付ける服装やハイヒール
などがあります。さらに精神的な要因を含めれば、原因は大変、多岐にわたります。
肩こりにマッサージの効果はあるのか?
肩こりを起こしている時、首や肩は血流が悪くなっていって、新鮮な酸素や栄養分が伝わりにくく、疲れやすい状態になっています。また緊張性の疲労が生じ、筋肉が硬化しています。
あるいは筋肉が粘土のように弾力を失って軟弱になり、気・血・水の流れが悪くなります。その結果、気・血・水が入れ替わらず、溜まった状態になります。すなわち、新陳代謝の状態が悪くなります。
そこには、血液や体内水分が停滞して、老廃物が蓄積されています。適度な運動やマッサージによって、そんな状況を一変することが可能です。
部分よりも全体
忘れてはならないことは、不快なところの部分的な改善だけに固執せず、全身の健康状態をアップさせることです。全体がよくなれば、部分は自然に改善するのです。
肩こりの原因となる背景を取り除く
肩こりの原因が食生活の不摂生にある人は食生活を、過労や睡眠不足が重なっている人はその解消を、ストレスや運動不足がある人はその改善も大切です。
肩こりの背景となる原因を取り除くことが根本改善につながります。
それでは、効果の高い改善方法を具体的に示してゆきます。
たった5~10分の軽い運動や体操、マッサージでも肩こりは解消
まず、運動のお話から進めていきましょう。
私は軽い運動をお勧めしています。
疲れているから動かないほうが良いか?
1日、仕事をして帰ると、誰しも精神的にまた肉体的に疲労しているので、何も運動をせずに寝てしまいます。頭が疲労すると、肉体も疲労し、身体を休ませないといけないと思うのです。
慢性の運動不足は、この疲労感から起こります!!
例えば、毎日、疲れて帰ってくると、テレビを見て酒を飲んでストレスを解消するのが日課になったりするのです。
本当に疲労し、5分か10分さえ身体を動かせない人がいるでしょうか?
倒れ込むほど疲れている時は、寝た方が良いのに決まっています。しかし、たいていの人は、テレビを見たり、酒を飲む時間は充分ではなくてもあるのです。
テレビを見て、酒を飲んで、手っ取り早くストレスを解消したいだけなのです。
動けるのに、動かないのです。
身体を動かして疲労回復
驚くことに、このストレスからくる疲労感は、ほとんどの場合、5分か10分、身体を動かすだけで解消されるのです。身体を動かすと、10分もすると気分が転換され、肉体疲労も解消し、身体を動かす方が楽しくなるのです。
その訳は、以下のようです。
運動の多様な効果、セロトニンのリラックス効果
運動を始めると、呼吸が少しずつ深くなってゆきます。吐く息は、副交感神経を刺激して、心をリラックスさせ、同時に緊張した筋肉を緩める効果があります。
さらに身体を10分ほど動かし汗がにじみ出す頃には、脳内伝達物資のセロトニンが分宓されます。セロトニンは、緊張を解きほぐし、心を和やかにし、リラックスさせる効果をもたらします。
テレビを見たり、酒を飲むのは、その後でも良いでしょう。楽しいテレビ観賞や美味しい酒になるでしょう。
新陳代謝の良い身体を作ろう
新陳代謝が良く、自然回復力が高い健康な身体を作るには、例えわずかな時間でも、仕事以外でも身体を動かすことが大切です。
マッサージをする事で得られる6つの効果
1.気分転換- 気は血の帥(気は血を生み出し、巡らし、血管の中をスムーズに流す)
2.血流の促進-血は気の母(血は気を生み出し、気を乗せて全身を巡る)
(典拠:「入門:内科医のための漢方医学 11.鍼灸理論と病気の機構」『内科』80-6, 1997, p.1172.)
3.新陳代謝の促進-新しいものを生み出し、老廃物を代謝する働きが高まる
4.疲労回復-免疫力を高める
5.安眠効果-筋肉を和らぎ、血流が改善し、眠りが深くなり眠りの質が高まる
6.五臓の調整-内臓機能のバランスを整え、食欲を増進し、眠りにつきやすくする
肩こり改善のマッサージ方法
以下の運動は、立位でも座位でもできます。
1.体側を伸ばすマッサージ
両手を挙げ、手のひらを外側に向ける。右手で左手の手首をもち、息を吸いながら左手を上に引き挙げ、体側にピッタリとつける。息を吐きながら右側にできるだけゆっくりと倒す。反対側も同様に行う。これを2回行う。行きにくかった側は、さらにもう一回行う。要領は、心地よくアクビをして伸びをするように行う。
2.腋を伸ばすマッサージ
首の後ろに手を回し、両肘をまげ、右手で左の肘をつかみ、右側に息を吐きながらゆっくり倒す。反対側も同様に行う。これを2回行う。行きにくかった側は、さらにもう一回行う。
3.胸と背中のマッサージ
背中の後ろで、五指を組み、胸をはる。息を吸って、息を吐きながら、組んだ手をできるだけゆっくりと下に降ろす。この時、首は前に曲げる。息を吸いながら、組んだ手を挙げ、息を吸いながら胸を広げそらす。この時、顔は上に向ける。これを2、3回繰り返す。要領は、息を段々と強く、深くすることである。
4.上半身の血流を鼓舞するマッサージ
両手を上に挙げ、肘を伸ばし、息を吐きながら手首を激しく細かく揺さぶる。息を吐ききったら、また吸って、同様に行う。1分を目安に、腕を振り終わったら、ストンと腕を降ろして脱力する。この時、要領は、上からロープで両手が引き上げられているような意識をもつと楽にできる。
5.身体の前と後ろを伸ばすマッサージ
-ストレッチのポイントは首-
首の後ろで手を組み、肘を広げ、息を吸いながら胸を張る。両手を枕にして、身をまかせて眠るような気持ちで、胸をそる。息を吐きながら、肘をすぼめ、首を軽く曲げ、ストレッチを行う。息を吐ききったら、再び肘を広げ、息を吸いながら胸をそらし、顎を上げ首の前を伸ばす。ここまでが首のストレッチです。
-ストレッチのポイントは背中-
次は同様に、肘をすぼめ、息を吐きながら、背中を丸める。背中を充分に伸ばし息を吐ききる。息を吸いながら、肘を広げ、胸を広げ、顎を上げ喉を伸ばす。後ろに身をまかせ、もたれるようにする。
-ストレッチのポイントは腰-
さらに同様にして、腰まで深く曲げる。
大切なことは、身体の前と後ろを充分に伸ばすことなので、呼吸に合わせてできだけゆっくりと行います。
6.リラックス効果の高い首のマッサージ
背中の後ろで五指を組み合わせ、胸を張って、息を吐きながら指を下に降ろす。
胸を反らし、背中を伸ばした状態で首のストレッチを行う。
まず息を吐きながら、左側に倒す。充分、息を吐ききるまで、ゆっくり行う。
息を吸いながらゆっくりと首を中央に戻す。一呼吸置く。息を吸って、息を吐きながら、首を右側に倒す。息を充分に吐ききったら、首をゆっくりと中央に戻す。
前後も同様に行う。
息を吐きながら、首を左から右に回旋させる。回旋させながら、ひっかかるところや、もっと伸ばしたいところがあったら、そこでそのまま息を吐きながらストレッチ。
息を吐ききったら、息を吸って、何回繰り返しても良い。
~ポイント~
すべての動作は、息を吐きながらゆっくりと行うこと。また最後まで息を吐ききることである。呼吸は主旋律で、動作が伴奏のようなものである。自分自身が、吐く息になりきったつもりで行うと、リラックス感がさらに高まる。
上達するほどリラックス感が増してゆきます!!
マッサージでやってはいけない事
1.動作はすべて吐く息で行い、息を止めないこと。
何故なら、吐く息は笑う時の呼吸で、楽しくリラックスした状態です。吸う息は泣く時の呼吸で、悲観的で緊張した感情を示します。息を止める時は、重いものを持つ時など、力が入って緊張した時の呼吸です。いずれにしても緊張した状態では、筋肉は緩まないので、リラックスした吐く息の笑いの呼吸で行うのが一番良いのです。
2.身体の声を聴きながらゆっくりと行い、強く行わないこと。
何故なら、動作を速く行うと身体の声に気づきません。なので、強くなりすぎたりします。ゆっくりと行うことで始めて、身体の声に耳を傾けることができます。身体は常に様々な信号や情報を出してくれているのです。それらの情報を聞いて、身体にピッタリ合わせた力加減で行うのです。
3.吐く息になりきって行い、動作に固執しないこと。
マッサージの時ぐらいは、頭の中を空っぽにしたいものです。なかなか難しいのですが、その方がマッサージの効果が上がります。
その秘訣は、自分の意識を吐き出している呼吸に置き(心を集中させ)、その吐く息になりきることです。そうすることで、自らのとらわれから解放されやすくなります。心を空じる、すなわち何も考えない状態で行うのが一番良いのです。我々の頭の中は常に様々な情報や我欲で満杯で、それらから離れられないからです。
自我から解放されると、心がとても楽になってゆくので、今まで自分が如何に囚われ、こだわり、ひっかかっていたことが分かります。
4.空腹でもなく、満腹でもない時が一番良く、食後すぐには行わないこと。
食後すぐは消化のために血液がお腹に集まっています。マッサージを行うと全身に血液が流れます。なので、食後すぐは消化をスムーズに行うために避けた方が良いのです。
★上記の「肩こりのマッサージ方法」で示したマッサージのように、様々なポーズを取り、身体を動かすと、身体の隅々までマッサージを行うことができます。すべてのポーズは、呼吸に動作を合わせ、無心で行うことが一番効果的です。
マッサージを行うタイミング
1.意識して気がついたら行う。
2.身体が自然に動き、いつでもどこでも行えるようにクセづける。
まとめ
~老化現象の解消~
端的に言えば、筋肉は身体の中心に向かって、求心的に縮もうとする傾向がありますので、身体の外側に遠心的に広げるようなつもりで動作を行います。
マッサージは、若返り、老化現象の解消にとても効果があります。
~吐く息を意識して行う~
すべての動作は、吐く息で行う。吸う息は、息を吐ききった時、自然に入ってきますので、意識して息を吸わない。息を吐ききった時、さらにほんの少しだけ息を吐く意識をもつと息が一瞬止まります。
この時、身体の声を聴こう。心の声を聴こう。
心も身体も、常にあなた自身と対話をしたがっているのです。
~簡単なマッサージから始めよう~
マッサージの方法は、ストレッチでも指圧でも心地良く叩くのでも良いです。また、手や足の指を押したり伸ばしたり、回したりストレッチをするのも効果が期待できます。
~マッサージは健康につながる~
身体のどの部分も、経絡を通して五臓六腑につながっています。大脳にもつながっており、内臓の働きや理性・感情などの精神活動にも結びついています。
マッサージは、内臓の働きや精神活動をスムーズに改善する働きがありますので、気がついた時、ちょっとした時間が空いた時に実践しましょう。