不眠症とは

筆者
はらだ鍼灸整骨院 院長 原田浩一
"はり・灸と健康は仲がいい"

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睡眠とはなんでしょうか?


睡眠は人間が生きていくために不可欠なものです。
眠りたいという気持ちは、少しでも長生きしたい、食べたいなどの気持ちと同じ生理的欲求の一つなのです。ですから、人間にとっては眠れるのが当然で、誰でも習わなくても生まれたときから自然に行う営みなのです。
睡眠は、人間の三大欲求の一つであり、よく眠れる、眠ることが嬉しいということは、人間本来の正常な状態であり姿と言えます。

睡眠の働きには、
①身体と脳を休め、心と身体を癒す
②成長ホルモンを分泌させる
③免疫力を高める
④ストレスを軽減させる
などがあります。

睡眠のメカニズム


次に、睡眠のメカニズムをみてみましょう。
レム睡眠とノンレム睡眠という言葉を聞いたことがある方もおられると思います。
ノンレム睡眠とレム睡眠をワンセットにして、睡眠の一単位といい、大体90分から100分の周期で、繰り返されます。

ノンレム睡眠は、脳を休ませる睡眠で、レム睡眠は、身体を休ませる睡眠です。
1日6時間~8時間眠るとすれば、この睡眠の一単位が4回~5回繰り返されるわけです。

睡眠のシステムと質について、見ていきましょう

普通、人間の睡眠は下の表のように、ノンレム睡眠から始まります。
ノンレム睡眠は、浅い眠りから深い眠りまでの4段階に分かれています。
ごく浅い第1段階の眠り(うとうとして眠りに入る浅眠期)から始まります。そして第2段階(すやすやと眠りにつく軽眠期)に入ります。
第1と第2は浅い睡眠の段階です。
その後、第3段階(ぐうぐうと本格的に眠る中等睡眠期)、第4段階(ぐっすりと深い眠りに入る深眠期)に入ります。
第3・4段階は、深い睡眠です。
さらに眠りは第4段階の後で、再び第3段階、そして第2段階の浅い眠りに戻り、その後でレム睡眠に入ります。
レム睡眠とは、身体は深く眠っているのに、脳が起きているような浅い眠りです。身体は完全に休んでいるのですが、脳が働き記憶の整理などをしています。レム睡眠は全睡眠の20%を占めています。
このようにしてノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返されます。

レム睡眠とノンレム睡眠・グラフ
画像引用元:厚生労働省-eヘルスネット

★ノンレム睡眠は、成人では一晩の中で、第1段階は、10~20%、第2段階は、40~50%、第3・4段階は、それぞれ15%ぐらいを占めています。
  
★レム睡眠は、表からわかるように、睡眠時間が長くなるにつれて長くなっています。

一夜の中で比べると、夜間の前半は深睡眠が多く、レム睡眠は明け方になるほど長くなり、多くの人が朝、夢から目ざめることが多いのは、こうしたレム睡眠の夜間分布の特徴によります。

レム睡眠のこのような特徴は、睡眠段階が人の体内時計を24時間リズムに同調させるのに貢献しているとの見解があります。
(「茨城県立健康プラザ:睡眠に関する基礎知識」(http://www.hsc-i.jp/05_chousa/doc/suimin_program/no5.pdf)による)

反対にノンレム睡眠は、
2回目の周期が終わると、第3、第4段階が無くなり、第2段階ばかりになっています。
不眠症の人は、この第3、第4段階の深い眠りが無くなり、第1、第2段階の浅い眠りばかりになっていると考えられます。

深い眠りが得られやすいゴールデンタイム


ノンレム睡眠の深い段階は夕方から夜中にかけて出現しやすく、午後10時から午前0時をピークに、午前3時までの時間成長ホルモンが多く分泌され、睡眠のゴールデンタイムと言われています。
成長ホルモンは、新陳代謝を活発にし疲労回復を行う大切なホルモンなのです。

このようなことから、一般的には午前0時までに寝た方が、より大きな満足感が得られ、身体も回復するのです。
それ以降、徐々に深いノンレム睡眠の出現率は下降していきます。
ですから、基本的には午前3時を過ぎて眠りにつくと、睡眠時間は十分とれても、深い睡眠は得にくいといえるのです。

不眠症の眠りの特徴


さて、不眠症の人のように、第1段階、第2段階の浅い眠りしかとれないと、起床時に頭がボーっとするなど、熟睡感が持てません。
しかし、このような不快感の一部は、不眠そのものよりも、むしろよく眠れたという満足感がないことや、眠れなかったことに対する失望、あるいは睡眠不足で健康を害したり、大切なことに集中できないのではないかという不安など、心理的な影響によるものが大きいと考えられます。
けれども、仕事など何らかの理由で、完全な徹夜をしなければならない場合と異なり、たとえほとんど第1、第2段階の睡眠ばかりであっても、レム睡眠はきちんととれているはずですから、正常な睡眠ほどとはいかないまでも、実際はかなりの休養がとれているのです。

また、不眠症の人は、他人にはすやすやと眠っているように見えても、深い眠りに入っていないため、ちょっとした刺激ですぐに目が覚めてしまいます。
このような深い眠りに入れない最も大きな原因は、「また今夜も眠れないのでは」という恐怖と不安など、精神的なものであると考えられます。

年齢や性別、生活習慣の違いによって適した眠りは違っています。
他人と睡眠状態が違っても、本人が満足し、心身ともに健康で、昼
間に正常な活動ができるならば、不眠症ではありません。

ノンレム睡眠とは?


先に申し上げたように、ノンレム睡眠とは、脳が眠り、身体が起きている睡眠で、精神面での休養と、身体機能の回復を行う睡眠です。

ノンレム睡眠は、睡眠の約80%を占め、脳を休め修復するための睡眠と言われ、深さに応じて四つの段階に分けられます。人間は眠りにつくとき、まずこのノンレム睡眠から始まります。

ノンレム睡眠 – 第一段階

第1段階は、まどろみ期と呼ばれ、非常に浅い睡眠です。
イスに座りながら姿勢を保っていられる程度の浅い眠りです。

ノンレム睡眠 – 第二段階

第2段階は、軽睡眠期と呼ばれる浅い睡眠で、イスに座っていると頭がカクンとなり、姿勢を保てなくなるが、名前を呼ばれると反応できる程度の眠りです。

ノンレム睡眠 – 第三・四段階

第3、4段階は、深睡眠期と呼ばれる熟睡状態で、徐波睡眠と呼ばれ、多少の物音でも起きることはありません。脳機能が低下し、脳を休息させ、脳を修復させています。

睡眠の質を高めるためには


特にこの深いノンレム睡眠中には、体温が下がり、代謝活動が最低になってエネルギーを温存し、組織の成長や回復を行います。
また、筋肉に送られる血液の量が多くなり、体力を回復させます。
さらに、深いノンレム睡眠中は、脳下垂体前葉からの成長ホルモンの分泌が一日のうちで、最も盛んになります。
特に、1回目の第3、第4段階の深いノンレム睡眠では、最も多くの成長ホルモンが分泌されます。さらに第2回目のノンレム睡眠でも、第3・4段階の深い睡眠が得られます。
成長ホルモンは、とくに眠り始めの3時間に集中して分泌されます。ということは、この3時間にぐっすり眠ることを意識することで、睡眠の質を高めることができるのです。
成長ホルモンは、子供の発育に欠かせないホルモンですが、おとなにとっても大切です。
成長ホルモンには、身体活動に必要な物質を合成し蓄え、不要なものを排泄させる働きがあるのです。
成長ホルモンによって新陳代謝が活発になり、組織の修復や機能回復が行われるのです。
すなわち、疲労の回復です。
このように、深い睡眠は日中の活動に備えて体力を蓄えるために、絶対に欠かせないものなのです。
また、ノンレム睡眠時は、副交感神経系が優位となり、呼吸もゆるやかになり、心拍数が下がります。
体温が下がると血液の温度も下がるので、それによって脳のオーバーヒートを防いでいると考えられます。

レム睡眠とは?


レム睡眠とは、身体は深く眠っているのに、脳が起きているような浅い眠りです。
眠りに入る前の浅眠期によく似た脳波状態、すなわち脳が起きている状態で、眼球がまぶたの下で、左右を見るように激しく動いているので、REM(Rapid Eye Movement)睡眠と名づけられました。全睡眠の約20%を占め、頭がよく働いているので、この時、夢を見るのですが、姿勢を保つ筋肉(抗重力筋、姿勢筋)の緊張がほとんど無くなり、目はキョロキョロしていますが、身体はだらりとしています。すなわち、身体は完全に休んでいるのですが、脳が働き記憶の整理などをしています。
レム睡眠中は、脳の血流量が増して、自律神経機能である血圧や心拍数はあがり、不規則に変化しています。
目覚めているときよりも交感神経系が活発になっているのです。

記憶や感情、情報の処理・整理

レム睡眠は、記憶や感情、情報の処理・整理などを行っています。レム睡眠の身体的特徴として、急速眼球運動という、目がキョロキョロした状態がみられること、姿勢を保つ筋肉の緊張が低下し、身体がだらりとする状態が挙げられます。

言い換えれば、レム睡眠とは、脳が目覚めていて、身体が休んでいる睡眠なのです。


我々は、生活の中で様々な、思考や判断、感情の処理、記憶など膨大な量の情報に触れています。
眼球が激しく動いているときに、大脳はそれらの情報を頭のなかのノートにきれいに整理し直しているのです。
レム睡眠中に、脳は一日に得た情報を保管し、これまでの情報と組み合わせて再編成し、より使いやすいように、必要な情報を優先順位に合わせて並び替えているのです。
そして、それによって新たな学習や行動をうながすのです。


ですから、レム睡眠をきちんととることができれば、問題や悩み事を抱えていても、朝、目覚めたときに、新しい考えが閃いたりして、新たな行動力につながるのです。
仕事や勉強など日中の活動は、脳の記憶や情報を活用することで、支えられています。
ですから、レム睡眠がとれないと、学ぶ、考える、記憶するなどの、日常の行動に大きな支障が生じるのです。
レム睡眠は、日中の活動をベストな状態に持っていくために、欠かせないものなのです。
またレム睡眠中は、脳細胞を休息させ、セロトニンなどの神経伝達物質の補給を行っています。
神経伝達物質は、脳の中の特定のニューロンと別のニューロンを交信させるメッセンジャーのような働きをしています。
神経伝達物質は正常な精神活動を行うために欠かせないものなのですが、激しいストレスや感情の刺激、過剰な精神活動などによって、ひどく消耗してしまうのです。

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、セロトニンには、他の神経伝達物質であるドパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)などの情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になりバランスを崩すことで、攻撃性が高まったり、不安やうつ・パニック障害などの精神症状を引き起こすといわれています。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html

レム睡眠で作られる大切な神経伝達物質=セロトニン

睡眠中に脳内で作られるセロトニンなどの神経伝達物質は、ストレスの原因となる有害物質(コルチゾン、アドレナリンなど)を除去する働きがあるのです。
レム睡眠は、神経伝達物質の補給が行われる、とても大切な睡眠でもあるのです。

レム睡眠時には、肉体疲労の回復が行われる

レム睡眠のときは、筋肉は弛緩して、身動き一つしません。
筋肉の緊張がほとんどなくなっているのです。
ですから、感覚的な刺激を与えても目覚めにくいのです。
さて、レム睡眠をしている人を起こすと、約80%の人が夢を見ていると言われています。
一般に、夢を見ているのはこの時期だと考えられています。
また、レム睡眠は、ノンレム睡眠を繰り返すたびに段々長くなります。

夜の睡眠が短いとどうなるの?

夜の睡眠が短いと、あけがたに現れる長いレム睡眠がなくなってしまうのです。前述したように、レム睡眠を失うことは、翌日の学習や思考、記憶や行動に大きな影響を及ぼします。ですから、本当に心身を休めるためにはある程度の睡眠時間が必要であるといえるのです。

グラフを見て頂いたら分かる通り、睡眠時間が長くなるにつれてレム睡眠が長くなっていますよね。レム睡眠は目覚めの準備状態でもあり、この時に目ざめるとスッキリします。

なにが睡眠を浅くするのか?

過剰なストレスは自律神経を乱す

過剰なストレスは、交感神経が優位になり、自律神経を乱します。通常ゆっくりしている時や、夜眠る時は、副交感神経が優位になり、脳と身体がリラックスしています。

交感神経と副交感神経の拮抗が乱れる


しかし、過剰なストレスが続くと、本来、副交感神経が活動している時に交感神経が働いて優位になります。それは交感神経と副交感神経は、どちらも同じ量のエネルギーが必要です。シーソーの上に交感神経と副交感神経を乗せた時に、平衡状態にならなくてはいけません。
脳の激しいストレスが長く続くと、交感神経のエネルギーが高くなり、副交感神経のエネルギーが減少します。副交感神経のエネルギーが減少したのはリラックスしている時間が短く、エネルギーを充電する時間が足りなかったからです。
副交感神経の充電が充分でないので、眠りについてリラックスしている時に、交感神経が働いて、心臓がドキドキしたり、イライラし、不安や緊張をもたらすのです。そして、眠ろうとしても眠れなかったりして、夜中に何度も目が覚めると、焦りや葛藤が生じます。
こうなると眠りが浅くなってしまい、疲労が取れず、目が覚めてもリフレッシュできていないので、意欲や集中力が出てこないのです。

シーソーが平衡になるバランスが必要


自律神経は、副交感神経と交感神経から成り立っています。緊張した時に交感神経が優位に働き、リラックスしている時は副交感神経が優位に働いています。
交感神経が働いている時は、副交感神経は休んでいます。副交感神経が働いている時は、交感神経は休んでいます。両者は拮抗した働きをしており、シーソーのようにバランスを整えています。どちらも必要であり、どちらが過剰になってもいけないのです。自律神経が失調すると、肩こりや不眠、イライラ、葛藤、落ち込みなど、様々な不定愁訴が現れます。
不眠を改善させるためには、不眠という症状の背景となる原因を突き止め、改善することが大切です。その原因は、一人一人異なるので、自分の生活を一度、見直してみませんか・・・。

不眠の原因は?


睡眠を改善するためには、睡眠の障害となっているその背景となっている事実をつかむことが大切ですと申しました。
毎日を必死で生活していると、意外と気づきにくいのですが、それは毎日の日常生活の中にあるのです。人間と言う文字は、人と人の間と書きます。心の中に起こる不安や心配、葛藤、多くの悩みの元となるものは、殆どの場合、人と人との間の関係から生まれてきます。それは、自分の目標や夢であったり、他人の評価や信頼関係などです。

悩みは二種類ある


悩みには二種類があります。
一つ目は、自分で解決できる悩みです。自分の心の問題だけで努力すれば解決できることです。
二つ目は、自分の心だけでは解決できない、自分の心の持ち方や努力だけでは解決できない、他人が関与している場合です。他の人の評価や信用に関するものです。たとえば、屈辱的な評価や、信用を失うことにつながる悩みです。

一つ目の問題は、不眠に至ったとしても、一過性のもので身体を大きく障害することはありません。ストレスの背景となる原因を見つけて、解決する努力しましょう。問題から逃げないで取りくめば、早く解決でき解放されるでしょう。
二つ目の問題は深刻です。不眠だけに止まらず、身体の他の機能や精神をも傷害することがあるからです。

一人で抱えないで、信頼できる人に相談しましょう


ストレスの背景となる原因が自分の努力だけでは解決できないことなので、心のおける友人や信頼できるメンター(生き方として尊敬できる方)に勇気を出して相談しましょう。人に話せば、心が楽になります。本当に心配なことをあからさまに打ちあけましょう。口にはしたくない、出せないと思っている恥ずかしいことや不安、屈辱的な気持ちを打ちあけるのです。

話してみれば自分だけの重大な悩みと思っていたことを、当たり前のように理解し、それどころか、他の人も同じような立場や状況を何度も味わっており、何と心から理解し共感してくれるのです。
さらには、もっと深刻な悩みや経験を何度も体験していて、どのように克服したかなどアドバイスをしてくれます。当事者は自分だけが悲劇の主人公になりがちですが、誰しも同じような経験を重ねて強くなっているのです。深刻な悩みは自分だけに起こるものではないことに気づくのです。

人に話すことができれば、それだけでストレスは半減します。
身体(肉体)に影響を及ぼす症状がでれば、早めに病院で診察を受けましょう。
心の悩みを相談できる方が身近に見つからない場合は、専門のカウンセラーに相談することも良いでしょう。ひとりで悩まないで、少しでも早く相談することをお勧めします。


自分ひとりでは解決しがたい大きなストレスを仕方なく放置しておくと、不眠という症状がさらに他の重大な身体の障害につながってゆく可能性があります。
たとえば、胃腸に影響すれば、食欲不振や便秘を起こしたり、短期間でも潰瘍を招いたり、腸閉塞に至ったりします。
肝や心肺、脾、腎などの臓器に影響すれば、動悸や息切れ、集中力の低下などの血流障害や、むくみなどの代謝障害、さらに心身の調和を乱すと深刻な不安障害や精神抑鬱に陥いりかねません。
現在でも治しがたい疾病である癌も、ストレスが誘因となって発症することが分かっています。人によってどのような疾病として現れるかは異なりますが、早期に対処することによって重大な疾病を防ぐ事ができるのです。

客観的な視点で見れば、自分では解決できないどんなに大きな問題であっても、必ず解決できるものです。
一人でずっと考えていると、マイナスの感情がどんどん大きくなり、登れば超えられる山であったものが、超えられない巨大な山に見えてきます。マイナスには、プラスの感情が必要です。マイナスを整理して取り除き、プラスの感情をたくさん入れるのです。


鍼灸の仕事をしていて30年、あらゆる疾患に精神的な悩みや心の持ち方が大きく関与していることを見てきました。どうか、耐えられないほどの大きな心配や悩みを抱えた時は、どうかご連絡下さい。
個人の秘密は厳守され、他に漏れる心配はありません。風邪をひいたら病院に行くのと同じような気持ちで、気楽にご相談ください。

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はらだ鍼灸整骨院 院長 原田浩一
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